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マンチェスター・シティにデ・ブライネがもう1人。特別な資質を持つSBが得点力不足解消のカギに【分析コラム】

プレミアリーグ第15節、マンチェスター・シティ対ニューカッスル・ユナイテッドが現地時間26日に行われ、2-0でシティが勝利を収めた。シティは直近3試合で2得点と攻撃陣が停滞していたが、4試合ぶりに複数得点をマーク。ゲームメイカーとしての才能を発揮する26歳が、得点力不足解消のカギになるかもしれない。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

試合を支配したマンチェスター・シティ

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【写真:Getty Images】

「ゴールはサンタクロースがプレゼントしてくれるわけじゃない。我々のパフォーマンスから生まれるんだ。もちろんゴールは重要だが、それは結果。もっとうまくプレーしなければいけない」

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 ニューカッスル戦に先駆けて行われた記者会見で、ペップ・グアルディオラ監督はこのような言葉を残した。そして、クリスマスの翌日、イギリスでは祝日に定められているボクシングデーに行われた試合で、シティはサンタクロースに頼ることなくゴールを掴んだ。

 90分でボールタッチ数は1000回を超え、ボール支配率は75%に達している。5-4-1で引いて守るニューカッスルに対して、シティは執拗なまでにボールを回し続けた。

 14分という時間帯の先制点は、シティの試合運びを楽にした。即時奪回のためのプレッシングの集中度が高く、カウンターからピンチを招く機会はほとんどなかった。シティ側もフィニッシュに持ち込める場面は少なかったが、試合の主導権を離すことはなかった。

 54分に追加点を奪い、その後は余裕をもって時計の針を進めることができた。3点目を取って試合を終わらせることはできなかったが、勝ち点3をためには2点あれば十分だった。

 この試合は悪天候、過密日程という悪条件の中で行われた。新型コロナウイルスの陽性反応が出たカイル・ウォーカーやガブリエウ・ジェズスは欠場。さらに、試合終了から46時間後にはエバートン戦が控えている。「我々は得点を奪うことに関しては苦しんだが、求めているプレーを遂行した」と指揮官は試合を振り返った。

0トップと流動性

 低いブロックを敷くニューカッスルを攻略するには、ハーフスペースを突破するのが得策だった。シティの中央はフェラン・トーレス、ケヴィン・デ・ブライネ、カンセロ、イルカイ・ギュンドアンが流動的にポジションを替え、ブロックのギャップを生み出そうとした。

 先制点のシーンはそれが見事にはまった。ライン間から降りてきたデ・ブライネが左サイドからパスを受けると、カンセロが降りてきてバイタルエリアでボールを受けた。相手の最終ラインがカンセロに食いつくと、右サイドでラヒーム・スターリングがマーカーの背後を取ってDFの裏を突破した。流れるように相手の逆を突いていき、最後はギュンドアンがゴールに押し込んでいる。

 ジェズスが不在、セルヒオ・アグエロも90分出るのが難しい状況で、ニューカッスル戦ではトーレスが先発で起用された。ボックス内で真価を発揮するストライカーがいない0トップの状況では、相手のマークを剥がすための流動性が効果的にチャンスを生み出していた。

 シティは左サイドバックに起用されたナタン・アケと2人のセンターバックが最終ラインに残り、右サイドバックのジョアン・カンセロがインサイドにポジションを取った。幅を取るのはウイング、ラヒーム・スターリングとベルナルド・シルバの役割で、前半は利き足側のサイドに配置されている。

 後半はスターリングとベルナルド・シウバのポジションを交換。幅を取る役割はサイドバックのアケとカンセロが担い、両ウイングはアタッキングゾーンへ侵入するプレーを増やした。相手を押し込むことができ、相手に反撃の隙を与えなかった。

デ・ブライネともう1人の司令塔

 この日のシティには司令塔が2人いた。正確に言えば中盤の底で舵を取るロドリや攻守のバランスを取るギュンドアンもある意味司令塔なので、チャンスメイカーという表現が正しいかもしれない。2得点を演出したのは右サイドバックのカンセロだった。

 今季のデ・ブライネはここまで7アシストを記録している。トップのハリー・ケインが10アシストと異常な数字をたたき出しているが、デ・ブライネも、20アシストをマークした昨季と同ペースでアシストを重ねている。この試合でも効果的なプレーを見せていたが、それ以上にカンセロの活躍が目立っていた。

 加入1年目の昨季はウォーカーの控えの域を脱せず、リーグ戦の出場は17試合に終わったが、今季はチームに欠かせない存在となっている。グアルディオラ監督は「明日もプレーできる」と、カンセロのフィジカル面の強さを称賛。身体的な頑丈さはトップレベルにおいては重要な要素で、離脱者が多いシティを支えている。

 さらに、今季は両サイドバックをこなし、攻撃面でも高いクオリティを見せている。「ファイナルサードでは特別な資質を備えている」とグアルディオラ監督は称賛した。

 先制点の場面だけでなく、2点目のシーンはカンセロのボールリカバリーとクロスから生まれている。バイタルエリアでの落ち着いたボール捌きや、鋭くて正確なクロスボールはシティの攻撃を彩った。

 右サイドのハーフスペースでカンセロが仕事をすることで、デ・ブライネは左からチャンスメイクに徹することができた。2人の司令塔がいることで、後半のようにベルナルド・シウバとスターリングがゴール前の仕事により関わることもできる。カンセロが攻撃面で与える影響は大きかった。

 シティはリーグ戦4試合ぶりの複数得点で、連続無敗記録を6試合に伸ばした。年末年始の過密スケジュールをウォーカーなしで戦わなければいけない。しかし、カンセロはシティの得点力不足を解決するポテンシャルを持っている。

(文:加藤健一)

【了】

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