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さらに、アストン・ヴィラを変える選手とは? 守備の要と中盤を支える男たち【徹底分析・後編】

「プレミアリーグ謀略者たちの兵法」と題してプレミアリーグの監督たちを特集した12/7発売『フットボール批評issue30』から、昨季プレミアリーグ王者リバプールを7-2で圧倒し今シーズン多くのサポーターを驚嘆させた“ヴィランズ”を結城康平氏が掘り下げた記事より一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:結城康平)

text by 結城康平 photo by Getty Images

イングランド代表にも選出。タイロン・ミングスとは?

タイロン・ミングス
【写真:Getty Images】

 DFラインの中核を担うのは、イングランド代表にも選出されたタイロン・ミングスだ。リーダーシップを高く評価される27歳は、憧れのジョン・テリーから学んだ統率力で常に守備陣をコントロールしていく。積極的なハイプレスを仕掛けることも少なくないチーム戦術において、彼のラインコントロールは重要だ。同時にスピードと対人戦を武器とする彼は、ハイラインの背後に生じるスペースでの勝負にも自信を持っている。

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 相手のストライカーを封じる技術と執念の強さから、ゴールライン際でのシュートブロックが多いことも特徴だ。一つの弱点としてはポジショニングで、特にサイドに流れた選手をマンツーマンで追いかけようとする傾向が強い。結果的に最も頼りになるCBがサイドに釣り出されてしまう状況は、アストン・ヴィラとしては好ましいものではない。彼とCBを組むことが多いエズリ・コンサも身長は高くないので、どうしても中央の高さ勝負が厳しくなってしまう。

 逆サイドバックを狙うようなファーサイドへのクロスボールも、アストン・ヴィラは組織として対応に苦慮する傾向がある。そのような部分を改善することで、最も強いエリアでボールを奪う守備組織が完成するはずだ。

 中盤でボール狩りの中心となるのが、スコットランド代表のジョン・マッギンだ。激しいタックルを好むスコットランドリーグで育まれたセントラルハーフは、球際の強さと実用的な技術を兼ね備える。激しいプレーを厭わない強さでボールを奪ったかと思えば、密集地を切れ味鋭いターンで突破するようなテクニックも必見だ。

 ショートカウンターの起点になれるMFは攻守両面で中核を担っており、26歳という働き盛りの年齢も魅力的。ボールを持たない局面でも着実に仕事をこなす彼への期待は大きいが、一方で常に全力のプレーを続けるタイプなので「過密日程による消耗」は不安要素かもしれない。

チェルシーから加わった実力者の価値とは?

アストン・ヴィラ
【写真:Getty Images】

 マンチェスター・シティから昨年加入したドウグラス・ルイスは中盤に定着している1人で、もともと世代では高い評価を得ていた選手だ。アンダー世代の代表チームでは王国ブラジルの中心選手として活躍しており、ヨーロッパ経験の長さを感じさせるポジショニングの良さと気の利いた展開力で存在感を発揮する。守備では相手との競り合いにも対応し、流れの中で攻撃参加するタイミングで発揮される柔らかいテクニックも兼ね備える。

 その中盤に新たに加わったのが、イングランド代表MFロス・バークリーだ。チェルシーでは熾烈なポジション争いに敗れてしまったが、攻守両面でのバランスは抜群。ボールを刈れるだけでなく、強烈なミドルシュートとテクニックで相手を翻弄する。直線的なプレーが多いことで駆け引きを得意としていないところがトップレベルでは評価されない一つの要因だが、アストン・ヴィラのスピーディーなスタイルとの相性は悪くない。2020年の夏にローンで彼を加えたことで、中盤の層は厚みを増した。

(文:結城康平)

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30号_表紙_fix

『フットボール批評issue30』


定価:本体1500円+税
プレミアリーグ謀略者たちの兵法

≪書籍概要≫
監督は謀略者でなければならない。それが世界最高峰の舞台であるプレミアリーグであればなおのことだ。さらに中堅以下のクラブを指揮している場合は、人を欺く行為こそ生存競争を勝ち抜くために必要な技量となる。もちろん、ピッチ上における欺瞞は褒められるべき行為で、それこそ一端の兵法と言い換えることができる。
BIG6という強大な巨人に対して、持たざる者たちは日々、牙を研いでいる。ある監督は「戦略」的思考に則った「戦術」的行動を取り、ある監督はゾーン主流の時代にあえてマンツーマンを取り入れ、ある監督は相手によってカメレオンのように体色を変え、ある監督はRB哲学を実装し、一泡吹かすことだけに英知を注ぐ。「プレミアの魔境化」を促進する異能たちの頭脳に分け入るとしよう。



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【了】

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