フットボールチャンネル

セリエA 3年前

吉田麻也がクリスティアーノ・ロナウドに“神タックル”連発。ユベントス戦で光った熟練CBの職人芸【分析コラム】

セリエA第20節が現地30日に行われ、サンプドリアはユベントスに0-2で敗れた。この試合にサンプドリアのセンターバックとして先発フル出場した日本代表DF吉田麻也のプレーを、象徴的な場面を中心に振り返っていく。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

失点場面は痛恨だったが…

吉田麻也
【写真:Getty Images】

 センターバックという職業は試合に負けてしまうとなかなか評価されづらい。

【今シーズンの欧州サッカーはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 セリエA第20節が現地30日に行われ、サンプドリアはユベントスに0-2で敗れた。サンプドリアに所属する日本代表DF吉田麻也は先発フル出場。負けたものの、9連覇中の王者に対しても一歩も引かず、随所に光るプレーを見せた。

 まず失点場面を振り返っておきたい。20分の1失点目は吉田にとって痛恨だっただろう。

 自陣ペナルティエリア左でユベントスのFWアルバロ・モラタがボールを持つと、吉田の相方であるDFオマール・コリーが引き出される。しかし、モラタはワンタッチで中に折り返し、逆サイドから詰めていたフェデリコ・キエーザがワンタッチでゴールネットを揺らした。

 モラタにパスが出たタイミングで、吉田はコリーが左に出ていったのを確認。そして、すぐ後ろに視線を送って右サイドバックのバルトシュ・ベレシンスキが絞ってきているのも見えていた。そのうえで中央でモラタからの折り返しのコースに入った。

 しかし、逆サイドから猛然とゴール前に詰めてきていたキエーザにベレシンスキが完全に振り切られており、吉田は背後を取られてしまった。極めて早い展開のなかで一瞬の判断を迫られる局面だったが、吉田にとっては痛恨の失点になってしまった。

 終盤の2失点目はカウンターからだった。サンプドリアから見て右サイドに開いたクリスティアーノ・ロナウドに縦パスが入り、吉田は前を向かせないためハーフウェーラインを超えてアプローチをかけた。だが、ユベントスの背番号7は内側に振り向くと一気に逆サイドへ展開する。

 この時点でサンプドリアのゴール前にはGKエミル・アウデロとコリーのみで、ユベントスは攻め上がってきたDFフアン・クアドラードと途中出場のMFアーロン・ラムジーがいた。フィールドプレーヤーは自陣ゴール前で1対2の数的不利な状況になっていた。

 クリスティアーノ・ロナウドからのパスを受けたクアドラードは、冷静に寄せてきたコリーの股を抜いてラストパス。最後は完全フリーのラムジーが押し込んだ。吉田の戻りは間に合わず、チームとしても完全に崩された失点だった。

C・ロナウドに“神タックル”2連発

吉田麻也
【写真:Getty Images】

 こうして見るとディフェンス陣がユベントスに蹂躙されたように感じられるが、個の力で対抗できていた場面もあった。吉田もあわや失点という場面をスーパープレーで阻止している。

 42分、ロドリゴ・ベンタンクールのロングパスにクリスティアーノ・ロナウドが抜け出す。中盤からサポートに入ったアルビン・エクダルがユベントスの背番号7に併走するが、シュートを打たれてもおかしくない場面だった。

 そこで吉田はやや遅れ気味だったが、思い切って後ろからクリスティアーノ・ロナウドの足もとに飛び込んだ。その瞬間はファウルでPK判定が下ってもおかしくない状況。だが、主審は笛を吹かなかった。

 改めてリプレイを確認すると吉田のタックルはボールを正確に捉えており、クリスティアーノ・ロナウドには触れていなかった。一発のロングボールから生まれた一瞬の判断が求められ、失点に直結しかねない場面でボールだけを掻き出す職人技。さすが欧州トップリーグを生き抜いてきたベテランのセンターバックという神タックルだった。

 直後の43分にも自陣ペナルティエリア内を突破してきたクリスティアーノ・ロナウドの足もとに滑り込み、ファウルすることなくボールだけをきれいにゴールラインの外に蹴り出した。2連続の“神タックル”は吉田の経験値と技術がなければ、ユベントスにPKを与えることになっていただろう。

 選手のスタッツをまとめている『sofascore』によれば、吉田はクリア「2回」、シュートブロック「1回」、インターセプト「4回」、地上戦のデュエルは「4回中3回成功」、空中戦勝率「100%」など守備面で大きく貢献。さらにビルドアップの面でもパス成功率「90.6%」と安定した能力を発揮した。

 同サイトの採点では「7.2」と評価され、これはサンプドリアの選手で最も高い数値だった。クラウディオ・ラニエリ監督からの信頼も厚く、ディフェンスリーダーとしてふさわしいパフォーマンスを継続している。

 ワールドクラスの選手が隕石のような勢いでゴールに迫ってきても、個の性能で阻止限界点を死守できる。欧州トップリーグで生き残ってきた日本人センターバックは伊達じゃない。

(文:舩木渉)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top