ACミランは正念場を迎えている。10人相手に反省すべき戦いぶり、失っていた粘り強さ【EL分析コラム】

ヨーロッパリーグ(EL)・ラウンド32の1stレグ、レッドスター・ベオグラード対ミランが現地時間18日に行われ、2-2のドローに終わっている。主力を温存したミランは2度リードを奪いながらも勝ち切ることができず。相手に退場者が出たことで数的優位にもなったが、それらを生かせなかった。同チームは今、正念場を迎えているのかもしれない。(文:小澤祐作)

2021年02月19日(Fri)11時30分配信

text by 小澤祐作 photo Getty Images
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イブラヒモビッチら主力温存

ミラン
【写真:Getty Images】

 レッドスター・ベオグラードとミランが最後に対戦したのは2006年8月22日まで遡る。この時はチャンピオンズリーグ(CL)予選3回戦の2ndレグで激突しており、フィリッポ・インザーギとクラレンス・セードルフの得点で2-1としたミランが勝利。2戦合計スコア3-1で本戦出場を決めていた。

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 その後、カルロ・アンチェロッティ監督率いるチームはバイエルン・ミュンヘンやマンチェスター・ユナイテッドなどを退けファイナル進出。最後はリバプールに“リベンジ”を果たし、見事ビッグイヤーを獲得している。

 それから15年が経過し、ヨーロッパリーグ(EL)という舞台でレッドスターとミランが再び顔を合わせることになった。

 ミランは予想通りズラタン・イブラヒモビッチやハカン・チャルハノール、フランク・ケシエなど複数の主力選手を温存。今冬新加入のマリオ・マンジュキッチを初めて先発で起用し、負傷明け間もないイスマエル・ベナセルもピッチに送り出している。

 最終ラインから丁寧なビルドアップを図るレッドスターを前に、ミランは高い位置からプレッシャーを与えることでそれを阻止していた。詰められたホームチームはショートパスがズレるなどリズムを掴めず、タッチライン際のデヤン・スタンコビッチ監督が頭を抱えるシーンが早い時間から見られていた。

 ミランは39分にベナセルが負傷交代を余儀なくされるアクシデントに見舞われたが、その3分後に先制点を奪っている。クロスを処理しようと滑り込んだラドバン・パンコフのオウンゴールだった。

崩しのパターン

 守備時に5バックとなるレッドスターを崩せるパターンは、前半の早い時間から見られていた。

 レッドスターはミランのセンターバックに対しエル・ファルドゥ・ベン・ナブアンとディエゴ・ファルチネッリのツートップを当てており、ダブルボランチにはトップ下のミルコ・イバニッチ、そして中盤底のゲロール・カンガを前に置いて当てている。こうして相手のビルドアップを制限しにかかっていた。

 しかし、3-4-1-2のダブルボランチを担ったカンガが一つ前に行くことにより、中盤底もう一枚のニェゴシュ・ペトロビッチがアンカー気味になるのだが、彼の両脇のスペースを埋めることにはかなり苦労していた。

 ミランはそのエリアを主にロングボールを駆使しながら突いている。実際、22分にはフィカヨ・トモリの鋭いフィードに反応したトップ下ラデ・クルニッチがペトロビッチの左側背後を抜け出し、左サイドのアンテ・レビッチへパス。クロアチア人FWのシュートは惜しくも枠を外れたが、ビッグチャンスだった。

 また、ゴールキック時にはジャンルイジ・ドンナルンマが長いボールをペトロビッチがいる辺りに落とし、一気に前へ出るというシーンも作っている。

 さらにサイドバックの攻め上がり、とくに左サイドバックのテオ・エルナンデスの攻撃参加によってレッドスターを困らせることもできていた。

 T・エルナンデスに対しては基本的に右ウイングバックのミラン・ガイッチがつくのだが、ミラン側のサイドハーフが大外に開いた場合、T・エルナンデスは内側のレーンを突くことが多いので、ガイッチはサイドハーフの方に流れる。

 カンガは前に出ており、ペトロビッチは中央クルニッチのマークを外すわけにはいかないので、カバーに回れない。そしてレッドスターの3バックは基本的にゴールに近い場所で守っているので、迂闊に前へは出られない。すると、T・エルナンデスがフリーになる状況が生まれる。サイドハーフは大外にいることでゴールに近い場所でプレーできなかったが、T・エルナンデスの攻撃力を考えればこの形もレッドスターに対しては有効だったと感じている。

 上記の形が最もわかりやすかったのは64分の場面である。ここではシュートまで持ち込めなかったが、ペナルティーエリア内まで侵入するなど可能性を示している。

最後までギアが上がらず

 しかし、崩しのパターンが見られてはいたミランだが、この日は最後までギアを上げることはできなかった。

 1点リードで迎えた52分にはアレッシオ・ロマニョーリがペナルティーエリア内でハンドをとられPKを献上。これをカンガに沈められ同点とされた。

 61分にはミランにもPKが与えられ、これをT・エルナンデスが沈めて再びリードを奪っている。さらに77分にはミラン・ロディッチが2枚目のイエローカードを受けて退場。数的優位にもなった。しかし、後半アディショナルタイムにコーナーキックから失点。途中出場ミラン・パンコフにニアサイドで合わせられた。

 メンバーを多少落とした中、アウェイで2ゴールを奪えたことは大きい。ただ内容に目を向ければ、やはり一人少ない相手に勝ち切れなかったことは反省すべきだ。

 疲労も溜まってくる中、ミランのペースは落ちてきている。前半戦の同チームは苦しくても粘り強く勝利を手繰り寄せていたが、0-2で敗れたスペツィア戦、そしてレッドスター戦では相手の勢いに飲み込まれてその「粘り」を失っていた。

「シーズンの重要な時期なので、自分たちの試合を分析し、パフォーマンスレベルを上げなければならない。我々はもっとうまくできる。全体的な状況を見ることが重要。怪我人が多く、同じ選手が出続けており、今は疲れている。みんなの調子を取り戻さなければいけない」。

 レッドスター戦後のステファノ・ピオーリ監督のコメントだ。「調子を取り戻さなければいけない」、「今は疲れている」という言葉からも分かる通り、ミランは今正念場を迎えていると言えるだろう。

 日曜にはインテルとの首位攻防戦が控えている。ここで勝利できれば再び上昇気流に乗ることができるはずだが、果たして。

(文:小澤祐作)

【了】

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