リバプールはなぜダービーで完敗したのか? 決定的な場面で起こる“ボタンの掛け違い”を直すには…【分析コラム】

プレミアリーグ第25節、リバプール対エバートンが現地時間20日に行われ、0-2でリバプールが敗れている。マージーサイド・ダービーに敗れて4連敗を喫したリバプールは、不調に陥っている。その原因はどこにあるのだろうか。(文:本田千尋)

2021年02月21日(Sun)12時59分配信

text by 本田千尋 photo Getty Images
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リバプールの不調の原因

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【写真:Getty Images】

 単なる“ボタンの掛け違い”なのだろうか。2月20日に行われたプレミアリーグ第25節。アンフィールドでエバートンに22年ぶりの白星を献上した後で、ユルゲン・クロップ監督は、繰り返し「決定的な瞬間」という言葉を口にした。

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「決定的な瞬間において、我々はミスを犯したり、何か奇妙なことが起こったりする」
「決定的な瞬間において、我々は改善する必要がある。それは明らかだ」
「決定的な瞬間において、我々はもっと落ち着く必要がある。例えばフィニッシュの場面で」

 4連敗という泥沼でもがく熱血漢の指揮官は、「決定的な瞬間」において「適切な」アクションを起こせていないことが、リバプールが陥る不調の原因の一端だと考えているようだ。クロップ監督は、次のようなコメントも残している。

「フットボールの試合で結果を変えるためには、結果を手にするためには、守備と攻撃の適切な瞬間に決定的でなければならない。そして、それは我々に欠けているものだ」

 このエバートン戦では、試合が始まって間もない3分に「決定的な瞬間」が訪れている。自陣の中央からハメス・ロドリゲスにスルーパスを通され、裏に抜け出したリシャリルソンに先制点を献上した。

 この局面では、ハメスに対してチアゴ、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、カーティス・ジョーンズの3人で囲みに行ったが、それはプレッシングという程のものではなく、文字通り相手を囲んだだけだった。足を出したのはチアゴぐらいで、強度の高いプレスで奪い切るというリバプールらしさは皆無。挙句、ハメスに悠々とスルーパスを通されている。

 前述のクロップ監督の言葉を借りれば、「守備の適切な瞬間に決定的でなければならな」かったが「我々はミスを犯した」、といったところだろうか。

ポゼッションの質

 もちろんリバプールは4日前の16日、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のRBライプツィヒ戦のためにハンガリーのブダペストまで遠征しているので、疲労の蓄積は否めないだろう。対するエバートンも、3日前の17日に未消化分の第16節マンチェスター・シティ戦をこなしているが、会場はホームだったので、移動距離は無いに等しい。コンディション面ではカルロ・アンチェロッティ監督のチームに分があっただろう。

 エバートンはシティに1-3と大敗したが、アンチェロッティ監督曰く「今季対戦した中でベストのチーム」に完膚なきまでに叩きのめされたことで、かえって精神的なダメージはなかったかもしれない。リバプールに対してエバートンは[5-3-2]でブロックを構築し、インテンシティの高いカウンター型で挑んできた。今季のクロップ監督が手こずる引き気味の戦術である。

 絶好調のペップ・グアルディオラのチームと戦ったばかりのエバートンの選手たちにとっては、比較的リバプールのポゼッションは対処しやすかったかもしれない。目の前のチームには、フィジカルが強靭で配球に長けたロドリのようなボランチもいなければ、偽SBの進化系を体現するジョアン・カンセロのような選手もいないのだ。フロント・スリーも、シティの前線に比べると固定的である。

 このように考えると、リバプールの不調の原因は、重要な局面における適切な判断のズレといった“ボタンの掛け違い”ではなく、もっと根本的なポゼッションの質のようにも思えてくる。試合全体を振り返ると、ボールを動かして相手を揺さぶるアクションが少なく、攻撃がサイドに偏りがちだった。エバートンの選手からすると、クロスボールなど守備の的を絞り易かったのではないか。

フィニッシュの質

 もちろんエバートンを相手にリバプールが全くチャンスを創れていなかったわけではない。

 後半が始まってすぐの47分、左サイドのアンドリュー・ロバートソンからのクロスをゴール前でサディオ・マネがヘディング。50分には、敵陣でボールを奪うと、トレント・アレクサンダー=アーノルドが、右サイドに張ったモハメド・サラーとのパス交換からインサイドを深く抉って、ゴール前のマネに折り返す。69分には、右サイドからロベルト・フィルミーノ→ジェルダン・シャチリ→サラーと繋いで、GKジョーダン・ピックフォードとの1対1の局面を迎えている。

 しかし、いずれの「決定的な瞬間」においても、ゴールを割ることは出来なかった。冒頭のクロップ監督の言葉を借りれば、GKピックフォードを中心とするエバートンの守備陣は集中していて、「守備の適切な瞬間に決定的」だったということだろう。

 もちろん「攻撃の適切な瞬間に決定的でなければならない」が、全ての「決定的な瞬間」をモノにするのは難しいだろう。ペップのシティですら創り出した決定機の全てを決め切っているわけではない。

 試合後に熱血漢のドイツ人指揮官は、69分にサラーが1対1を迎えた局面について言及しており、この場面では至近距離にGKピックフォードがいたことでフィニッシュが難しかったと捉えている。しかし、それでもクロップ監督は、やはり決定機におけるフィニッシュの質は「改善する必要がある」と考えている。

クロップ監督が陥った負のスパイラル

 また、リバプールは、81分に敵のゴール前からロングカウンターを仕掛けられ、2失点目に至るPKを献上したが、このエバートン戦では、総じて前節レスター戦のようにカウンタープレスが機能していなかった。

 これらのことを踏まえると、やはりクロップ監督が述べるように、「守備と攻撃の適切な瞬間」、特に守備の「決定的な瞬間」の“ボタンの掛け違い”を直していくことが、リーグ戦の不調を脱していくことに繋がるのかもしれない。守備が安定し、不用意な失点を避けることができれば、チームも次第にリズムと自信を取り戻していく可能性はある。

 しかし、このエバートン戦では主将のジョーダン・ヘンダーソンも負傷離脱。野戦病院化が止まらない。そして身も蓋もないかもしれないが、新たにチアゴ・アルカンタラを獲得したとはいえ、そもそもリバプールのメンバーが、やはりポゼッション型を追求するための構成になっていないところもある。

 クロップ監督が陥った負のスパイラルを抜け出すことは、簡単ではなさそうだ。

(文:本田千尋)

【了】

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