PSGはなぜマンCに逆転されたのか。前半はこれ以上ない出来も…不運な形から招いてしまったものは?【欧州CL分析コラム】

2021年04月29日(Thu)11時29分配信

シリーズ:分析コラム
text by 小澤祐作 photo Getty Images
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チャンピオンズリーグ(CL)・準決勝1stレグ、パリ・サンジェルマン対マンチェスター・シティが現地時間28日に行われ、1-2でアウェイチームが勝利している。2季連続のファイナル進出を狙うPSGは前半こそ最高のパフォーマンスを見せたが、後半に入り2失点、一体、何が起きたのか。(文:小澤祐作)

前半は最高の出来

パリ・サンジェルマン
【写真:Getty Images】

 プレミアリーグで首位を独走するマンチェスター・シティがこんなに何も出来なくなるとは。これが、前半45分間の率直な感想だった。

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 2季連続のチャンピオンズリーグ(CL)決勝進出を目指すパリ・サンジェルマン(PSG)のスタートダッシュは、これ以上ないほど完璧。そう言っても不思議ではなかった。立ち上がりから積極的にボールを動かして相手を押し込むと、15分にセットプレーから先制。その後もネイマールとキリアン・ムバッペを中心に厚い攻めを繰り出し、シティにダメージを与え続けていた。

 PSGは守備時4-4-2で対応した。シティは4-2-4の形で攻めてきたが、サイドの選手が同レーン上に並んでいるので、サイドバックが前の選手を追い越す動きは少ない。そのため基本は前4人で攻撃を展開するのだが、そもそもケビン・デ・ブルイネやベルナルド・シウバの立ち位置は純粋なCFのそれと異なり低く、パスは足元へのものが基本。深さを作るという意味では大きく欠けていた。

 そのため、PSGのセンターバックにはほとんど負担がなかった。低い位置でボールを受けるデ・ブルイネらには中盤が対応できるし、背後を狙ってくる選手もいない。PSGの守備陣は揺れることなく、比較的余裕を持って準備できていた。

 シティが攻撃時に3バック化しなかったのは、ムバッペらのスピードを活かしたカウンターを警戒するため。実際、前半にフランス代表の若きエースが一発で裏や脇のスペースを取るシーンはほとんどなかったので、この形がダメだったかと言えばそうではない。

 ただ、PSGはもちろんカウンター以外でも力を発揮できる。4-4-2で守るシティに対し2枚のCB+レアンドロ・パレデスを基本にビルドアップしながらうまく前進し、ネイマールやアンヘル・ディ・マリアの個人技で剥がしてまた進む。シンプルだが、これを頻繁に繰り返した。とくに、ネイマールやムバッペが中央で人を引き付け、そこから空いた外側へ展開するという形が目立っている。彼らがある程度自由に動く点も、シティを困らせた要因と言えた。

シティの変化にも大きくは揺れず

 攻撃が停滞したシティは、前半途中より形に変化を加えている。それまでは4-2-4が基本となっていたが、左サイドバックのジョアン・カンセロを内側に置き、インサイドハーフのイルカイ・ギュンドアンを一列前に並べた3-2-5となった。狙いはもちろん、多少カウンターのリスクを背負っても前に人数をかけ、1点を奪いに行くというものだった。

 結局、前半は1-0のまま終了したが、シティは途中に加えた変化を後半頭から継続させている。後ろは3枚、ダブルボランチにギュンドアンとロドリ。前線に右からリヤド・マフレズ、B・シウバ、デ・ブルイネ、フィル・フォーデン、カンセロという形だ。

「前半は急ぎすぎてしまった。それは僕たちのやり方ではない。後半はもっと辛抱強くスペースを探したんだ」。

 試合後、デ・ブルイネはこう話していた。そのベルギー代表MFの言葉通り、シティは後半に入りポゼッション率を高めている。前線の5枚で幅も使いながらボールを動かし、しつこいほどPSG守備陣に揺さぶりをかける。56分には一発でムバッペに深さを作られピンチを招くなど、やはり後ろにかかる負担は大きくなったものの、とにかく1点を目指す姿勢を崩さなかった。

 ただ、シティが修正を加えたことによりPSGは前半よりも攻められる時間が増えていたのは事実だが、それにより守備がいきなり崩壊したわけではなかった。1点リードしているので、ボールを動かされても慌てる必要がなかったのだ。事実、後半開始からの15分間で、PSGはシティに1本もシュートを与えていないというデータが出ている。

 では、なぜ最終的にPSGは2失点を喫したのか。

大きな原因は自滅

 PSGの運命を変えたのは64分だ。コーナーキックの流れからデ・ブルイネにボールが入ると、同選手はペナルティーエリア外からクロス。このボールに誰も触れず、そのままゴールへと吸い込まれた。

 PSGにとっては崩されたわけではない、少しアンラッキーな失点だった。しかし、1点は1点。同点に追いつかれた上に、貴重なアウェイゴールを与えてしまったのだ。そしてこれが、結果的にPSGの焦り、フラストレーションを招くことになる。

 ボールを保持し続けるシティに対し、PSGは失点前まで我慢強く対応できていたが、失点後は早くボールを奪おうと少し軽率な飛び込みも見せるように。危険な位置でのファウルが増えたのだ。事実、前半終了時点で4回だったファウル数が、失点してからの15分間で8回に増えているというデータが出ている。

 結果的には、という形になってしまうが、2失点目を招いたのもゴール前でのファウルが原因。マフレズのフリーキックは見事だったが、ホームチームからすると防げた失点だったかもしれない。

 PSG側のイライラは明らかだった。ネイマールは不用意なファウルでイエローカードを貰っており、イドリッサ・ゲイェはギュンドアンへの危険なタックルで一発退場を喰らってしまった。こうなると、ほぼペースを取り戻すのは不可能となる。言い方は悪いかもしれないが、PSGはほぼ自滅だった。

 2ndレグ、PSGはアウェイで最低2ゴールを奪わなければならない上に、ゲイェを欠くという厳しい状況に追い込まれた。しかし、マウリシオ・ポチェッティーノ監督は2018/19シーズンの「奇跡」を経験している。今回も、同じことが起きるのだろうか。注目したい。

(文:小澤祐作)

【了】

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