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下部組織の20歳が「モドリッチの代役」を遂行した。レアル・マドリードMFが見せたインテリジェンスとは?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

ラ・リーガ第34節、レアル・マドリード対オサスナが現地時間1日に行われ、2-0でレアルが勝利した。UEFAチャンピオンズリーグ準決勝の2試合に挟まれたこの試合で、レアルは2人のベテランを休ませる決断を下している。ジネディーヌ・ジダン監督に抜擢された20歳のMFは、落とせない試合で自らの持ち味を発揮していた。(文:加藤健一)

モドリッチとクロースは休養

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【写真:Getty Images】

「たくさんのゲームがある。ルカ(・モドリッチ)とトニ(・クロース)は今日休んでいました。これはとても重要だった」

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 ジネディーヌ・ジダン監督は試合後、このように話している。レアル・マドリードは火曜日にチェルシーとUEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝1stレグを戦い、中3日でラ・リーガ第34節を迎えた。3日後にはチェルシーとの2ndレグ、その4日後にはセビージャとの一戦も控えている。

 ラ・リーガでも4強による熾烈な争いとなった優勝争いの真っただ中だ。バルセロナがグラナダに敗れ、4チームは3ポイント差にひしめき合った。オサスナ戦の直前にアトレティコ・マドリードはエルチェに勝利し、一歩先に出る形に。レアルとしてはこのオサスナ戦も決して落とせない試合だった。

 ジダン監督はこの重要な一戦で、トニ・クロースとルカ・モドリッチを休ませている。モドリッチは出ずっぱりの状況が続き、打撲の影響で3試合休んだクロースもチェルシー戦で復帰したばかり。チェルシー戦とセビージャ戦という“決勝戦”が続く状況で、無理をさせないという判断は納得がいくものだった。

 途中出場が続いていたエデン・アザールは、オサスナ戦で復帰後初めて先発起用された。アザールはトップ下に配され、両脇にはヴィニシウス・ジュニオールとマルコ・アセンシオが起用された。

ジダン監督はカンテラ出身の20歳を抜擢

 カゼミーロとともに中盤の底で起用されたのは、20歳のアントニオ・ブランコだった。カスティージャ(セカンドチーム)では主力だが、ファーストチームでの出場はこれが4試合目。4月18日のヘタフェ戦でデビューしたばかりで、これが2度目の先発だった。

 レアルは前半にゴールを決められなかったが、チャンスは多く作っていた。クロースの代わりに長いボールを蹴って展開したのはカゼミーロで、ブランコは味方のサポートに走り回っていた。モドリッチと同じ仕事をしていたわけではないが、代役としてのパフォーマンスは完璧だった。

 途中出場のイスコが蹴ったCKをミリトンが頭で合わせ、レアルは76分に先制する。レアルはその4分後に2点目を決めて、試合の大勢を決めた。

 2点目を決めたのはカゼミーロだった。自陣でアセンシオが縦パスを送ると、DFラインの前でカリム・ベンゼマが受けた。バイタルエリアまで運び、スルーパスを送る。右サイドにはオドリオソラが走っていたが、その間にいたカゼミーロがトラップ。このトラップが大きくなり、そのままゴールに吸い込まれた。

 レアルの攻撃が始まったとき、カゼミーロは中盤の底にいた。しかし、ベンゼマが降りてボールを受けると、ベンゼマを追い越して高い位置を取った。カゼミーロがペナルティエリアに侵入する場面は何度かあったが、そのときはブランコが必ず中盤のスペースを埋めていた。

レアルの将来を背負う存在に

 ブランコは13歳になる直前に、レアルのカンテラ(下部組織)に加入している。キックの技術は高いが、さすがにクロースには見劣りする。身長175cm体重64kgと体躯は、カゼミーロのように強靭とは言えない。しかし、ブランコにはインテリジェンスという武器がある。

 絶え間なくポジションを動かし、味方のパスコースを生み続ける。派手さはなくても、正確なショートパスで攻撃のリズムを作り出し、マルセロやカゼミーロが攻め上がったことで生まれたスペースを埋めていた。その機転の利いたプレーは、モドリッチを彷彿とさせる。

「アントニオ・ブランコがやってきて、彼は本当にうまくやっている。彼は良い仕事をした」と、ジダン監督は20歳のMFを称えた。ブランコも「ロールモデルであるカゼミーロとプレーできて光栄だ」と語っている。2人のピボーテ(守備的MF)は、レアルの攻守に安定感をもたらしていた。

 レアルの下部組織からトップチームに上がるのは至難の業だ。しかし、モドリッチは35歳でクロースも31歳。今のところはトップレベルのパフォーマンスを見せているが、これがあと何年続くかはわからない。熾烈な優勝争いとCLという舞台で経験を積んでいけば、ブランコは将来のレアルを背負って立つ存在になるかもしれない。

(文:加藤健一)

【了】

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