解き放たれた新たなサッカー戦術。世界を席巻する男が作り上げた哲学とは?【ユリアン・ナーゲルスマンの章・後編】

2021年05月17日(Mon)13時30分配信

text by 結城康平 photo Getty Images
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33歳の青年監督にして、来季からバイエルン・ミュンヘンの監督に就任することで注目を集めるユリアン・ナーゲルスマン。いったいどんな監督なのか? 5月17日発売『フットボール新世代名将図鑑』から、青年監督の先頭を走る「ユリアン・ナーゲルスマン」の章を一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:結城康平)

生み出された新たな新語。その意図は?

ユリアン・ナーゲルスマン
【写真:Getty Images】

 特にライプツィヒにおける戦術的柔軟性を象徴する存在が、コンラート・ライマーとマルセル・ザビッツァーだろう。ともにオーストリア出身のMFはプレーの幅が広く、どのエリアにも柔軟に対応していく。中盤に彼らのような選手を配置しているからこそ、ナーゲルスマンの理想とする流動的なフットボールが可能になるのだ。ポジションの概念から解き放たれた戦術は「ポジションレス・フットボール」と名付けるべきかもしれない。

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 同時にライプツィヒではレッドブルグループが掲げる理念であるハイプレスを機能させることを目指していることから、フィジカル的な側面も重要視している。新たに獲得したノルウェー代表のアレクサンダー・セルロートは194センチの長身FWで、もともとチームの主軸として活躍していたユスフ・ポウルセンと併用することで選手層の拡充に成功。

 レッドブルグループの最上位クラブとして、ザルツブルクやニューヨーク・レッドブルズをはじめとしたグループ内の他クラブからラングニックの哲学に適合した選手を補強することが可能なのも大きい。ワイドを広く使うことで相手の陣形を横に広げるようなアプローチを好まない点では、ラングニックとも共通している。

 ナーゲルスマンはプレッシングと攻撃のスピード、積極的なコンビネーションプレーを奨励するには選手同士の距離感が重要になると考えており、ワイドに広がり過ぎることはデメリットが大きいと考えているようだ。

 ライプツィヒが挑んだチャンピオンズリーグでは、量的優位を作ることを目標にケヴィン・カンプルが躍動。中盤の底でビルドアップを助けたと思えば、ハーフスペースに侵入する驚異的な運動量で攻撃を牽引し、新しいアンカー像を示した。

 ナーゲルスマンは「ホールディング・シックス」という造語で守備的なMFを欲しているとコメントしていたが、持っている手札を組み合わせることで斬新な戦術を生み出す柔軟性こそ、彼の成功のカギだ。

 カンプルが駆け上がることで生じたスペースにダヨ・ウパメカノが持ち上がり、そこから仕掛ける攻撃はまさに変幻自在。徹底した攻撃パターンの多さでアトレティコの守備を攻略したゲームは、同シーズンのCLにおける好ゲームの1つだ。

 また、ナーゲルスマンは独特な戦術用語を使うことでも知られている。中央に走り込むことで攻撃の中核を担う役割を持つWBを、「ジョーカー」と名付けていることは有名だ。選手たちにチーム戦術を無意識に浸透させる手法として、彼はチームだけが共有する言葉を設定していく。

(文:結城康平)


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【了】

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