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EURO2020 3年前

イングランド代表に存在した凄まじい“狩人”。クロアチア代表を前に獅子奮迅の活躍、一体誰?【ユーロ2020分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

リーズで鍛え上げられた狩人



 サウスゲート監督が「ミッドフィールドの選手たちにプレッシャーを掛けることがカギとなる」と振り返ったように、イングランド代表の選手たちは攻から守への切り替えを徹底し、ロングボールも交えながら、マルセロ・ブロゾビッチ、マテオ・コバチッチ、モドリッチの3枚で構成されるクロアチアの中盤に主導権を渡さなかった。

 この「(クロアチアの)ミッドフィールドの選手たちにプレッシャーを掛ける」点において秀逸な働きを見せたのが、ボール奪取に優れたカルヴィン・フィリップスだ。所属先のリーズでマルセロ・ビエルサ監督に鍛えられた“中盤の狩人”は、対クロアチア戦でメイソン・マウントと並ぶ右のインサイドに入った。ボランチよりも一列高いポジションに配置されたことが、一層効果的だったようだ。

 前半から高い位置でセカンドボールを回収し、敵の中盤底のブロゾビッチに「プレッシャーを掛け」、18分には右サイドで左SBヨシュコ・グバルディオル、19分にはボックス付近でコバチッチを立て続けに潰すなど、持ち味をいかんなく披露した。

 もちろんハリー・ケインを始めスターリング、フォーデン、マウントら他の攻撃陣もボールを失えば即座に切り替えて守備に労を惜しまなかったが、何よりフィリップスがボール・ハンターとして「(クロアチアの)ミッドフィールドの選手たちにプレッシャーを掛け」続けたことが、イングランド代表が主導権を握り続けることができた主要因と言えるだろう。

 後半に入ってもフィリップスはアンドレ・クラマリッチを潰し、53分にはカウンタープレスでモドリッチを潰すなど、リーズで鍛えた“ビエルサイズム”を発揮。そして極めつけはスターリングの決勝点のアシストだが、その場面に至るボールポゼッションも、そもそもは右SBキーラン・トリッピアーと一緒にフィリップスがクラマリッチからボールを奪ったところから始まっていた。

 ジャマイカにルーツを持つボール奪取の達人を、スターリングは「チームに多くのエネルギーをもたらした。僕らのゴールからは彼のクレバーなプレーを観ることができる」と称賛。まさにフィリップスの獅子奮迅の働きが、イングランド代表に初戦の勝利をもたらしたと言えるだろう。

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