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レアルも折れた地道な交渉の舞台裏とは? 直前の招集断念回避へ…東京五輪日本代表が歴代最強チームとなれた背景

text by 編集部 photo by Getty Images

久保建英
【写真:Getty Images】


 日本サッカー協会(JFA)は22日、来月開幕する東京五輪に向けたサッカー男子日本代表のメンバーを発表した。

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 今回の五輪出場メンバー18人のうち海外組が9人を占めている。フランス1部のマルセイユから浦和レッズへ移籍しJリーグ復帰が決まったDF酒井宏樹も含めれば、直近のシーズンを欧州で過ごした選手が半分以上ということになる。

 海外でプレーしている選手の多さは過去に類を見ない。例えば2016年のリオデジャネイロ五輪では18人の登録メンバーのうち海外クラブ所属は2人だけで、FW浅野拓磨はアーセナル移籍が決まったばかりだったため、海外組は実質FW南野拓実のみだった。

 ベスト4入りを果たした2012年のロンドン五輪では18人の登録メンバーのうち海外組は6人,
2008年の北京五輪に出場した海外組は2人。やはり今回の東京五輪の「9人」というのは、群を抜いている。

 海外組の選手が増えた背景には、個々のレベルアップや東京五輪の1年延期、さらにオーバーエイジ選手にA代表の主力を招集できたことなどがある。ただ、国際Aマッチウィークから外れた期間に開催される五輪に選手を派遣してもらうには、欧州トップリーグの各クラブの了承を得なければならない。

 今回の東京五輪に向けてベストメンバーを揃えるにあたっては、JFAと選手の所属クラブの交渉が鍵を握っていた。

「五輪というのは少し特殊な大会でして、欧州のカレンダーでいうと、だいたいが次のシーズンに向けた準備期間に行う大会にもなる。海外クラブとの折衝は非常に難しくなります。そうした中で、JFAとしては海外に拠点を置いて、そこを窓口として各クラブに(招集)レターを送った上でちゃんとした返事をいただいている。

そうした努力があって、海外組が多くなっても、我々の意図するチーム作りができると思っています。(欧州の)拠点から足繁く(各クラブに)通って頭を下げる努力に感謝したいと同時に、それに対する答えはピッチの中で出さなければいけない。それが金メダルになると信じて疑っていませんし、そうなってほしいと期待しています」

 反町康治技術委員長は、海外組招集の舞台裏についてこのように言及し、欧州に拠点を置いて各クラブと地道に交渉してきた「国際委員」の尽力に感謝も述べた。

 2016年のリオ五輪直前には、招集を予定していたエース候補のFW久保裕也が、当時所属していたヤングボーイズの了解を得られず代表チームに加われなかった。反町技術委員長は2008年に北京五輪代表の監督を務め、選手招集の難しさを経験している身でもある。

「北京五輪の時には、少し事前の折衝、クラブとの交渉がうまくいかなかったのもありまして、最後になってドタバタしたのが否めなかったと思います。それを踏まえてという言い方になるかはわかりませんが、いい体制を作ることが日本サッカーの歩みにつながると思っています。

欧州に拠点を設けてクラブと交渉して、こうしたチームを作り上げることができた。(五輪前の)6月の活動でオーバーエイジ選手を入れたのは(過去に)なかなかない。我々は一歩リードしていると思っています。海外のクラブ、Jクラブみなさんの協力があったからだと思うので感謝をするとともに、結果を出すのが我々だと思っています」

 反町技術委員長は、5年前の久保裕也と同様のケースを繰り返すことなく「現段階ではちゃんとみんな参加するということで捉えています」とも語っていた。

 つまり7月からMF久保建英を招集できたのも、東京五輪に向けて所属元のレアル・マドリードを説き伏せることができたからこそと言えるのではないだろうか。DF吉田麻也やMF遠藤航、DF冨安健洋ら欧州クラブで重要な役割を担っている選手たちも、それぞれが所属するサンプドリア、シュトゥットガルト、ボローニャの協力を得られて東京五輪に参加できる。

 過去の失敗から学び、同じことを繰り返さないよう、着実に準備を重ねてきた。招集不可能な選手を出さず、歴代最強との呼び声も高い東京五輪代表チームを編成できた要因にはJFAの緻密なコミュニケーション戦略と万全の組織体制があった。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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