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三笘薫、遅きに失した輝き。垣間見えたいつもの姿…個人技で鮮烈ゴールも「それ以外、何もできていない」【東京五輪男子サッカー】

text by 編集部 photo by Getty Images

三笘薫
【写真:Getty Images】



 U-24日本代表の東京五輪は4位という成績に終わった。6日に行われた3位決定戦でU-24メキシコ代表に1-3で敗れ、53年ぶりの銅メダル獲得は叶わず。またしても歴史を塗り替えることはできなかった。

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 PK、コーナーキック、フリーキックと3失点はいずれもセットプレーから。相手に巧みに主導権を握られ、日本はなかなか持ち味を出させてもらえなかった。そんな中、後半に反撃の1点を奪ったのはMF三笘薫だった。

 川崎フロンターレの一員として参加したAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のウズベキスタン遠征で右太ももを負傷し、そのままU-24日本代表に合流。五輪本番が始まっても、三笘はなかなかコンディションが整わずプレーの精彩を欠いていた。

「惜しいじゃダメなので。ゴール前のところとか、足りないところはわかっていましたけど、それをより痛感させられる大会でした」

 グループステージ第2戦のメキシコ戦では後半途中から、準々決勝のU-24ニュージーランド代表戦では延長戦から出番を与えられたものの、ノーインパクトに終わる。そして準決勝のU-24スペイン代表戦ではベンチ外に。日本の勝ち上がりにほとんど貢献できていなかった。

 三笘は大会中の自らのプレーを「自分自身の経験のなさとスキルのなさが、ああいうシチュエーションで、ああいうプレーになってしまったので、こういう舞台ではやってはいけないし、もっともっと課題はあると思います」と振り返る。

 ところが3位決定戦では、見違えるようなプレーを披露した。三笘は62分からピッチに立つと、切れ味鋭いドリブル突破を随所に発揮。3点を追っていた78分には、芸術的なシュートフェイントからドリブルで切り込み、名GKギジェルモ・オチョアの守るゴールをこじ開けた。華麗な足さばきとプレーの力強さは、Jリーグで猛威を振るっているいつもの三笘に戻っていた。

 それでも「最後にゴールを決められましたけど、それ以外、何もできていないし、僕自身が同点まで追いつけるチャンスがあったので、そこに悔いが残ります」と満足は一切ない。3点差を追いかける展開で「相手が疲れている状態なので、これくらいできないとダメ」とアタッカーにとっては入りやすい状況で、「どんなシチュエーションでも必要とされるプレーヤーにならないといけない」と、さらなる成長を誓った。

 結局、課題ばかりが見つかる大会になってしまった。ACLでの負傷は「所属チームで全力でやった結果なので、全く後悔はしていない」と語ったが、「自分自身の体のケアは、まだまだ弱い」と気づかされた。

「五輪だけでなく、(どこでも)スタメンで出れる選手にならないといけないので、海外で活躍している選手が(試合に)出ているのを見て、足りないところは全てしっかりと感じられました」

 この後、三笘は欧州移籍が濃厚と見られている。Jリーグで見せてきたような圧倒的な力は、世界を相手になかなか発揮できず失望も味わった。東京五輪のような失敗を、これからのキャリアで繰り返してはならない。競争はいっそう激しくなり、欧州では弱みや甘さを見せた瞬間に蹴落とされてしまう。

 明るい未来を切り拓いていくためには「個の力を高めるしかないと思っている」と三笘は言う。「ピッチで感じた違い、些細なことだったり、駆け引きのところもありますけど、そういったうまさも備え付けていかないといけない」という言葉通り、東京五輪で感じた「足りないところ」を埋めたうえでさらなる大成長を期待したい。

 失ったものを取り返すチャンスはまだまだある。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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