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アーセナル、チェルシー戦の完敗はなぜ? 無得点で被シュート数は…開幕3連敗の覚悟を【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

最後までチェルシーが上だった



 まず、アーセナルが最も頭を悩ませていたのが守備の対応だ。

 チェルシーは3-4-2-1のフォーメーションで最終ラインから丁寧にボールを繋いでくる。それに対しアーセナルは立ち上がりこそ高い位置からプレスをかけたが、相手がリズムに慣れてからはやや強度を落とすようになった。そして、ここから様々な歯車が狂い始めることになってしまった。

 アーセナルはワントップ+両サイドハーフが基本的に3バックを見て、トップ下のエミル・スミス・ロウがジョルジーニョのマークにつく形をとっていた。しかし、ジョルジーニョの相棒を務めるコバチッチへの対応が、右サイドのニコラ・ペペが絞るのかボランチ一枚が出るのかで曖昧となっていた。

 チェルシーはそこを突き、コバチッチにボールを集めた。そして推進力がありパスセンスも非凡な同選手は、見事攻撃にアクセントを加えている。事実、15分の先制点のキッカケは、コバチッチの一本の縦パスである。そして、30分の時点で最も多くボールに触れていたのが他でもないコバチッチだった。

 そんな中アーセナルは途中からアルベール・サンビ・ロコンガを一列前に出すことでコバチッチへの対応を改善した。しかし今度は、ロコンガの空けたスペースをシャドーのカイ・ハフェルツに使われたことで、結局はボールの奪いどころを失っている。チェルシーは常に、アーセナルを上回ってきたのだ。

 そして最後は、ルカクがアーセナルにパンチを打ち続けている。この新加入FWはとにかくボールを収め、全体のラインをアップさせる。そこから2列目の選手を確実に活かし、これでもかとホームチームを苦しめた。

 そのルカクへの対応にセンターバックのパブロ・マリは精一杯となった。そのため、左ボランチであるグラニト・ジャカの戻りが遅れると、左サイドバックのキーラン・ティアニーがメイソン・マウントとR・ジェームズの2枚を見なければならないという場面も何度かあった。アーセナルにとってはこれも痛かった。

 後半に入りアーセナルはややがむしゃら感を漂わせながら前に出た。前半にはなかった強度に、少しだけチェルシー側も手を焼いている。しかし、それでもトーマス・トゥヘル監督のチームは3列目を飛ばしたパスなどでプレスを回避。そして最後はルカクのポストプレーから多くのチャンスを作った。

 ボールの奪いどころを最後まで見つけられず、ルカクに無双された。これが、チェルシーに90分間で22本ものシュートを放たれた原因である。

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