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バルセロナの闇は深すぎる…。クーマン監督で解決できる問題ではない。選んだ“苦肉の策”とは?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

対照的な指揮官と選手のコメント



 クーマン監督はカディス戦の前日会見で、声明文を読み上げている。

「チャンピオンズリーグで奇跡は期待できない。先週バイエルン・ミュンヘンに敗れたことは、そのような観点から注目されるべきだ。現在クラブが再建中だという観点から」

 クラブのネームバリューを差し置いて、そこにある現実を見なければならない。チームが過渡期を迎えていることは明らかである。フラットに現有戦力を見れば、優勝争いではなく、トップ4争いに巻き込まれても不思議ではない。

 加えて、現状ではベンチメンバーすら埋めることができないほど選手層が薄い。ガビやデミル、アレックス・バルデといった17、18歳の選手を戦力の一部にしなければ試合をこなせない状況で、この日のベンチにいた攻撃的なカードはコウチーニョ1人だった。

 この状況で、クーマン監督にどうにかしろというのは酷にも見える。最大の問題は指揮官に解決できるものではなく、批判よりも同情が上回ってしまう。「メディアのみなさんも、我々がプロセスの途中だということは認識していると思う」という指揮官の言葉にも、その苦労がうかがえる。

 一方で、第3主将のセルジ・ロベルトは、「ラ・リーガを獲らなければいけない。我々にとってトップ4は十分とは言えない」とコメント。「2位や3位で終えるためにバルサのシャツを着ているのではない。タイトルを争うんだ」と、第2主将のジェラール・ピケも話した。

 コストカットをしてまで今季に臨んだ彼らからしてみたら、優勝を狙えないというのは納得できない。ただ、指揮官の立場からしてみれば、優勝を狙えるだけの戦力ではないというのも理解できる。

 現実主義の指揮官と、バルセロナの誇りを持ち続ける選手たち。この2つを紐づけて監督批判とでっちあげることもできるが、そんな短絡的な問題ではない。「今のバルサは、8年前のバルサとも違う」と言ったのはクーマン監督だが、かつての栄光が足かせになっているのかもしれない。

(文:加藤健一)

【了】

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