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レアル・マドリード、なぜ11人離脱でも勝てた? “美学なき勝利”の裏にある明確な指針とは…【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

アザールの復活がレアルにもたらすもの



「彼ら(ヴィニシウスとアザール)は、守備面においてチームが何を必要としているかを理解している。彼らは素晴らしい仕事をしたね。2人はハードワークと責任を示して、それから真のクオリティを攻撃面のプレーにもたらした。特に(試合の)早い段階でね」

 特にアザールは、プレーの切れ味は全盛期を取り戻せていないかもしれないが、後半戦に向けてアンチェロッティ監督は戦力として計算に入れているようだ。イタリア人指揮官は、ベルギー人FWについて「アザールはチームにとって重要だ。彼は戻ってきた」とコメントを残した。ビルバオ戦で示したアザールの戦術理解力と献身性は、今後のローテーションを考えれば、CLの決勝トーナメントも始まる後半戦に向けて、ポジティブな要素となりそうだ。

 何より、今回のビルバオ戦でレアルがクオリティを落とさなかった要素として考えられるのは、そもそもスタイルに関する伝統的な美学がないから、ではないか。たしかに“エル・ブランコ”には、常にスペイン国内外で強者であることが求められるが、常に美しく勝つことまでは求められていない。

 何を持って美しい勝利とするのかは国やクラブによって違うが、スタイルという点において、例えばポゼッションを高めてショートパスを繋いで相手を圧倒しなければならないといったように、そこまでレアルらしいサッカーというものはない。

 極端なことを言えば、サンチャゴ・ベルナベウでは、勝つことにこだわるのであればポゼッションにこだわる必要はないのだ。レアル・マドリードにおいては、スタイル云々ではなく、勝つことこそが美しいとも言える。

 よって、アンチェロッティ監督は、“レアルかくあるべし”といった呪縛に囚われることなく、ビルバオ戦ではメンバーを考慮して柔軟に戦い方を選択することができた。そしてサン・マメスでの年内最終戦で、“美学なき勝利”を掴んだのである。

(文:本田千尋)

【了】

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