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高校サッカーとイングランドに漂う「似たような空気」。予測困難な現代で失われつつあるのは…【英国人の視点】

シリーズ:英国人の視点 text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

「成功か失敗か」ではない



 パフォーマンスが目を引く選手たちに対して称賛を送る観戦者たちが特に意識するのは、今後彼らがどのようなキャリアの道を歩むのか、どのJリーグクラブがどの10番と契約を取り付けようと動いているのか。「明日へ。そして未来へ!!!」という今大会のキャッチフレーズも、大会がどのように見られるべきであるかを如実に表現していた。

 確かにそれも理解はできる。だが、国内であれ海外であれプロフェッショナルとしてキャリアを築いていく選手も当然いるとしても、大多数の選手たちはそうではない。彼らが今この瞬間に目を向けているのは明日でもなければ未来でもない。今回の成功を“礎”にしてプロになるのか、“失敗”して他のことをやるようになるのかではない。世界的に有名な会場で、4万2000人の観客の前でプレーし、日本で最も厳しい大会のひとつを制した今日の勝利を味わい噛みしめることだ。

「目の前の試合をひとつひとつ戦う」という決まり文句は、サッカー記者には好まれないとしても使われ続けている。それこそが試合への最善のアプローチだという確かな理由があるからだ。大きな絵を描くことも長期的目標を設定することもいいだろう。だが日常生活と同じく、毎日の仕事や目の前のボールから目を離してしまうわけにはいかない。

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