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熊谷紗希「世界で勝つのは程遠い」。なでしこジャパン、アジア3連覇逃し23年女子W杯へ危機感【AFC女子アジアカップインド2022】

text by 編集部 photo by 2022 Asian Football Confederation (AFC)

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熊谷紗希 AFC
【写真:2022 Asian Football Confederation (AFC)】



 なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は3日、AFC女子アジアカップインド2022の準決勝で中国女子代表に敗れた。アジア3連覇を目指した戦いは、2-2のままPK戦までもつれた激闘の末、ベスト4で幕を閉じることとなった。

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 試合を通じて主導権を握りながら、なかなかゴールをこじ開けられなかった。そして、2度追いつかれての敗退。なでしこジャパンのキャプテンを務めたDF熊谷紗希は「90分間、120分間通しても、とにかく勝たなければいけない試合だった」と悔やむ。

 そして「これからワールドカップに向けて、1人の選手としても、チームとしても、もっともっと成長していかなければ世界では戦えない」と危機感を募らせていた。

「自分たちは負けていますけど、アジアカップは決して世界と比べてレベルの高い大会ではないと思いますし、これから本当に自分たちがワールドカップで勝つとなったら、もちろん中国に負けてくるようでは勝てないし、戦う相手が全く変わってくる。

もちろんこの大会を通してのチームの戦い方を作っていくという意味で、今大会の負けや経験を積み重ねていかなければいけないとは思うんですけど、『そもそも(ワールドカップで)戦うところや戦う相手はこんなところじゃないぞ』というのは全員が理解する必要があると思います。

個の能力、チームの能力としての妥協点をもっともっと上げていかなければいけない。何より個々の能力アップがチームの能力アップにつながると思うので、世界で戦うために何をやっていくか、もちろん自分も含めて、ここからもう一度考え直す必要があると思います」

 昨年10月の池田太監督就任とともに始動した新チームは、試合を重ねるごとに戦術的な練度を上げていった。前線からボールを奪いにいくプレッシングなど、改善を見られた要素は多々あった。

 しかし、最終的に大きな課題として残ったのはゲームコントロールの拙さだった。今大会で勝てなかったグループステージ第3戦の韓国女子代表戦も、準決勝の中国戦も、先制しながら終盤に追いつかれる展開だったのが象徴的だ。

 熊谷も「相手が残り少ない時間、後半立ち上がりで攻め上がってくるところで、いかに後ろが耐えられるかが今大会の大きな課題の1つ」だと語る。

「例えばですけど、今日(中国戦)の自分たちが追加点を取れて、最後に守り切らなければいけない時間帯でどう戦うのか。具体的にどう守り切るのか、誰が(ボールを)キープするのか、誰が(相手陣内の)角に運ぶのか、もうちょっとチームとして全員の共通認識が必要なのかなと思います。

その時間帯にセットプレーを与えない、もちろん与えることはあるかもしれないけど、いらないものは与えない。そういった認識は、チームとして教訓にしていかなければいけないと思っています」

 延長前半の103分にFW植木理子のゴールで勝ち越したなでしこジャパンは、延長後半も終盤に差し掛かる112分に植木を下げてDF高橋はなを投入。ディフェンスラインを4人から5人に増やして逃げ切りを図った。

 しかし、守備的な姿勢が明確になっていながら120分に自陣内で相手にフリーキックを与え、その流れから劇的な同点ゴールを許してしまう。悪い流れのまま突入したPK戦で1人目の熊谷と5人目のDF南萌華が失敗して、準決勝敗退が決まってしまった。

 熊谷は「私自身、外してしまってチームに申し訳ないですし、不甲斐ない」とPK失敗に責任を感じているものの、「チームとしてはPKより前で(勝利を)決めたかった」と逃げ切れなかったことを何よりも悔やんでいる。

 2023年にオーストラリアとニュージーランドが共催する女子ワールドカップでは、出場国数が前回大会の「24」から「32」に増えて男子と同規模になる。そのうち欧州に11枠、北中米カリブ地域に4枠が与えられており、アジアの大半の国よりも実力で勝るチームが数多く参戦してくる。

「今大会、本当に正直不甲斐なさしかないというか。今日の中国に勝てないようでは、世界で勝つのは程遠いかなと正直に思います。世界になった時に、アジアのレベルがどれくらい高いかと言われたら高くないと思うので、このアジアで勝てないことは自分たちが受け止めなければいけない事実。これから世界で戦うために、今のままではいけないと思います」

 再びなでしこジャパンが世界の頂点に立つまでの道のりは極めて厳しい。少しでも可能性を高めるには、本大会まで限られた時間の中でアジアカップ準決勝敗退の反省をどう生かしていくかが1つの鍵になる。

 リードしている展開でいかにトドメの1点を奪いにいくか、逃げ切るならいかにして守りを固めるのかといったゲームコントロール術の改善が、池田ジャパンが向き合うべき喫緊の課題だ。

(取材・文:舩木渉)

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【了】

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