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バルセロナはなぜナポリに勝てなかったのか。「簡単に勝てた」試合で散々だった背番号19【EL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

もっと使うべきだったナポリの隙



 29分、バルセロナは一瞬の隙を突かれてピオトル・ジエリンスキにゴールを献上。そのまま0-1で前半を終えるなど、結果としてナポリにうまく守られる格好となった。

 ナポリは基本的にボールを大事にするチームで、どんなに深い位置でも丁寧に繋いでくる。バルセロナはそこに圧力をかけてミスを誘発し、チャンスを作ることはできていた。しかし、崩しのパターンはそこまで多くなく、アミール・ラフマニとクリバリによる2CBの壁を超えることが難しくなっていた。

 ナポリに隙が無かったわけではない。とくにバルセロナから見て右サイドは、十分に崩すチャンスがあったように感じている。

 スパレッティ監督は、アダマ・トラオレ対策として、左サイドバックにマリオ・ルイではなく、本職センターバックのフアン・ジェズスを置いている。先日のインテル戦でマリオ・ルイはデンゼル・ドゥムフリース対し後手に回り続けていたので、この人選は理に適っていたようにも思う。

 ジェズスはA・トラオレにほぼ張り付いていた。反対サイドにボールがある時でも、フィジカルモンスターの方に少しだけ重心を置いている。とにかく自由を与えないというのが、スパレッティ監督からのメッセージだった。

 ただ、大外に張るA・トラオレにつく分、CBクリバリとの距離は空く。バルセロナからすると、そこにインサイドハーフを走り込ませれば、ボックス内で1対1の状況を作り、相手に難しい対応を強いることができた。

 しかし、この日のアンカーはフレンキー・デ・ヨングで、右インサイドハーフはニコ・ゴンサレス。ご存じの通り前者は多彩なアクションを見せるタイプなので、ニコはその分バランスを取らなければならず、あまり深い位置に侵入することができなかったのだ。

 実は88分、このジェズスとクリバリの距離感を利用し、バルセロナはチャンス作っている。ウスマンヌ・デンベレがジェズスを引き付けると、ガビがチャンネルでボールを引き取る。するとクリバリが釣られ、それにより空いたスペースに今度はデンベレが走り込んだのである。非常に綺麗な崩しだった。

 上記したデ・ヨングのアンカー、ニコのインサイドハーフが決して悪かったわけではないが、ジェズスとクリバリの間に隙があったならば、より飛び出しに長けるデ・ヨングをインサイドハーフ、そしてバランスの取れるニコをアンカーに置いた方がチャンスの幅は広がったのかもしれない。そうなれば、前半のスコアも変わっていただろう。

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