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マンチェスター・ユナイテッドの得点力不足は“まだ”解消されていない。4ゴールを決めても安堵できない理由とは?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

得点力不足は解消されたのか?


 エラン・ロードに集まったサポーターの後押しもあり、試合の流れは完全にリーズへと傾いていたが、それを打破するべく67分にラルフ・ラングニック暫定監督はフレッジとアンソニー・エランガの2選手を投入する。

すると、その3分後に投入されたばかりのフレッジがスタジアムを黙らせる勝ち越しゴールを決める。さらに、試合終了間際の88分にはブルーノ・フェルナンデスの個人技からチャンスが生まれ、最後はエランガが仕上げてダメ押しの4点目が決まった。このまま試合は終了し、ラングニックの交代策が見事にハマったマン・ユナイテッドが敵地で4-2の勝利を収めた。

 前半終了間際のブルーノ・フェルナンデスのゴールと交代の直後の70分に決まったフレッジのゴールは、いずれも「ここで1点が欲しい!」という場面で生まれた得点であり、前節ブライトン戦でなかなか追加点を奪えず、自分たちで苦しい展開にしてしまった反省が活かされていた。

 こうした打ち合い上等の相手に最後の最後で殴り勝ったことは大いに評価をするべきだが、今年に入ってからの課題である得点力不足は解消されたと言い切れないだろう。

というのも、リーズは前に重心をかけて「失点を防ぐよりも2点、3点を狙う」チームであり、常にリスクを負った攻撃を仕掛けてくる。そのため、中盤でボールを奪うと数的優位な形で逆にカウンターを仕掛けることができる。

また、リーズは前々節アストン・ビラ戦、前節エバートン戦でそれぞれ3失点を喫しており、4得点をマン・ユナイテッドが得点力不足を解消したとは言い切れないだろう。

 真価が問われるのは、プレミアリーグで次節に対戦する相手ワトフォードになりそうだ。ワトフォードを率いるロイ・ホジソン監督はリトリートした守備的な戦術で守り切り、前線のタレントの個人技でカウンターから得点を狙う戦術を志向している。

 事実、昨季までホジソンが率いていたクリスタル・パレスには苦戦しており、崩し切れない展開からカウンターを食らい、ザハらの個人技に屈するという試合が多かった。ワトフォードにもイスマイラ・サールとエマヌエル・デニスという圧倒的な「個」が前線にいる上に、11月の前回対戦では1-4の大敗を喫している。降格圏に沈んでいるとはいえ、油断ならない相手となるだろう。

(文:安洋一郎)

【了】

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