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リバプールは何が変わったのか? 最悪の前半から12分で大逆転、ビジャレアルの夢を打ち砕いたクロップ采配【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 編集部 photo by Getty Images

的中したクロップ采配



 ビジャレアルはアンフィールドで行われた1stレグでは、守備時に4-4-2から5-3-2へフォーメーションを変更。リトリートしてゴール前にブロック作る際にボランチの1枚がCB間に入り、5バックを形成していた。

 リバプールの猛攻を防ぐ策ではあったが、1stレグを2-0で落としたため、この試合では攻勢に出る必要があった。そのため、2ndレグでは5バックを採用せず、前にダニ・パレホ、後ろにカプエといった形になり、アンカーの位置に入っていたカプエがより攻撃に参加しやすい陣形を取っていた。

 リバプールはパス精度を欠いた点も多かったが、このビジャレアルの守備陣形により、3トップ中央のジョタがボールを受けることが出来ず、後方からのロングボールでカウンターを狙う単調な攻撃になってしまっていた。また、カプエにアンドリュー・ロバートソンの裏を狙われ、2点を演出されていた。

 そのため、後半に入ると攻撃パターンを変更。先述した通り、左ウイングに入ったルイス・ディアスがサイドライン際でボールを持ち、積極的に縦への仕掛けをみせることで相手を引き付け、チアゴやファン・ダイクが空いた逆サイドへのロングボール配球して相手DFを揺さぶった。

 この左右の揺さぶりにより中央にスペースが生まれたことで中盤の選手に余裕ができ、より前線に上がることが出来たファビーニョが先制点を決めている。

 ビジャレアルに対応させる時間を与えず、攻撃を畳み掛けたリバプールは、2点目も同様の展開で奪取。左サイドでパスを繋ぎ、ピッチ中央でボールを持ったマネが逆サイドでフリーにアーノルドへパス。余裕をもってペナルティーエリア内を確認したアーノルドのピンポイントクロスに、中央でフリーになっていたルイス・ディアスが頭で合わせてゴールを決めている。

 前半とは見違えるように相手を圧倒したリバプールは、後半だけで13本のシュートを放った。パス成功率は84%、ボール保持率は62%と、完全に主導権を握っていた。

 相手の戦術に瞬時に対応したユルゲン・クロップの采配。対応する時間を与えずに猛攻を仕掛け、わずか12分という短い時間でチャンスをものにできたことが、劇的な逆転勝利を収めた要因と言えるだろう。

(文:阿部勝教)

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