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ピケの最後とバルセロナの美学。弱点を知られ尽くしたシャビ・バルサの未来【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

バルセロナには“バルサのサッカー”しかない



 しかし、それにしても、このピケのラストマッチで感じさせられることは、やはりバルサには“バルサのサッカー”しかないのだろう、ということだ。既にヨハン・クライフが率いた時代から、“美しく勝つ”ことが至上命題となり、ペップが率いた時代に、いわゆる世界中の誰もが即座に連想する“バルサのサッカー”が完成したわけだが、今ではそのスタイルが確固たるアイデンティティとなり、同時に足かせにもなっている。特に後方に広大なスペースを与える弱点は知られ尽くし、今季のシャビ・バルサもチャンピオンズリーグのグループステージを突破できなかった。

 それでも、もはやバルサが、この“バルサのサッカー”を放棄することはないだろう。CLで敗退したからといって、シャビ監督がシメオネ・スタイルのカウンター型に切り替えるとは考えにくい。これからも愚直にポゼッションを貫くだろう。

 だが、効率や合理性ではなく、ひたすら美学を貫くチームがあって、何も悪いことはない。その姿は、レアル・マドリードのファンからしたら不器用に映るかもしれない。

 しかし、何より“美しく勝つ”ことがバルサの至上命題。そのテーマにこだわりポゼッションを貫くことで、一時はなかなか勝てない時があったとしても、そのテーマが現在のポセッション・スタイルをさらに進化させて再びカタルーニャのチームを軌道に乗せ、引いてはフットボール全体のさらなる発展に繋がっていくに違いない。

 ピケが輝いた時代のバルサが、そうだったように――。

(文:本田千尋)

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