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メッシを活かすメカニズムを封じた。サウジアラビア代表のアルゼンチン対策とは?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 西部謙司 photo by Getty Images

アルゼンチン代表を完全に把握した守り方



 ルナール監督はアルゼンチン代表の攻撃時のメカニズムを分析しきっていたようだ。サウジアラビア代表の守備が一部非対称なのは、アルゼンチン代表の攻撃が非対称だからだ。ボランチ右側のロドリゴ・デ・パウルはやや上がり目で、ここはカンノとマッチアップする。もう1人のボランチ左側のレアンドロ・パレデスはアンカーポジションに近く、ここは少し引き気味のFWアル・ファラジが捕まえやすい。

 サウジアラビア代表のボランチの1人は中央でメッシをマークしているので、サウジアラビア代表の右側ハーフスペースは空いている。そこへアレハンドロ・ゴメスが下りてくるのを想定して右サイドハーフのアル・シャフリは予め絞ってスペースを埋めていた。アルゼンチン代表のSBは位置が低いのでマークする必要はないということだろう。

 さらに、サウジアラビア代表の左側ハーフスペースにいるMFデ・パウルが下がり、そこへメッシが下りてくることも想定していた。アンカーポジションのアル・マルキがついていくか、メッシがバイタルに留まっているときはCBが前へ出て迎撃する。

 非常によく考えられた、アルゼンチン代表の出方を完全に把握した守り方だった。

 ただし、守備配置が良いからといって守れるわけではない。アルゼンチン代表の攻撃メカニズムを読み切り、マークのズレが発生しないようにしながら、ディフェンスラインを高く設定してスペースを与えなかった。アルゼンチン代表はライン裏を再三狙い、何度も攻略に成功していたがそのたびにオフサイドになっている。タイミングはぎりぎりで、サウジアラビア代表のハイラインはリスキーだったが、そこはテクノロジーが助けてくれた。

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