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森保一の噂も…「日本人監督が欧州に行けない背景」シントトロイデン立石敬之CEOが分析する欧州移籍市場の実情とは【3/4】

シリーズ:シントトロイデン立石敬之CEOに訊く text by 元川悦子 photo by Getty Images

アジア出身監督が欧州に挑戦する前例


【写真:Getty Images】



 その前例ができた意味は大きかった。つまり、Jリーグで5年以上指揮を執り、3度のタイトルを獲得していて、さらに日本代表監督としてもカタールW杯でドイツ・スペインに勝利し、ベスト16入りした実績がある森保監督であれば、仮免許が出る確率が高いということだ。マスカット監督の時に課された1時間に及ぶ英語の面談が森保監督にはハードルになるかもしれないが、彼自身がSTVVの監督就任を希望した場合にはかなり前向きに物事が動く可能性が大なのである。

「カタールW杯の時、僕はスポンサー案件や取材などがあったのでベルギーにいましたが、代表選手以上に森保監督の評価がうなぎ上りでしたね。チームとしての団結力や勤勉なメンタリティというのは欧州でもリスペクトされている部分。『あの監督はどういう人物なんだ』と聞かれるケースもかなり多かったので、それだけ関係者の関心が高かったということなんです。

 森保さんは代表監督続投となったんで、今は欧州で指導することはないと思いますけど、日本人の別の実績ある監督がこのハードルを超えるべく、トライしてもいい。日本人指導者の国際経験をアップさせることをこの先、迅速にやっていかないといけないと思います」

 欧州の最前線にいる立石CEOの言葉は重い。長谷部誠がドイツB級ライセンス取得中だが、日本人が欧州で指導者ライセンスを取得する道は非常に険しい。それだけに、Jリーグや代表で実績を残した監督が欧州にチャレンジするケースをいち早く作らなければならない。目下、条件に見合う実績を残しているのは、川崎フロンターレの鬼木達監督、名古屋グランパスの長谷川健太監督ら少数だが、サガン鳥栖の川井健太監督のように若い世代の指導者もJの現場に増えてきているだけに、期待は持てそうだ。

 いずれにしても、誰が突破口を開くのか。欧州の最前線で監督として采配を振るうようになる日本人指導者はいつ出てくるのか。その動きに期待しつつ、今季のJリーグを見てみたいものである。

(取材・文:元川悦子)

プロフィール:立石敬之(たていし・たかゆき)


【写真:シントトロイデン】

国見高校時代に全国高校サッカー選手権大会優勝し、創価大学、ブラジル、アルゼンチンなどへの留学を経てベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)、東京ガスサッカー部(現FC東京)、大分FC(現大分トリニータ)でプレー。現役引退後は大分トリニータ、FC東京で強化部長やGMを歴任し、2018年にベルギー・シントトロイデンのCEOに就任。2023年1月でJリーグ理事を退任し、同年2月よりアビスパ福岡の副社長に就任する。

【了】

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