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第10回「サッカー本大賞2023」受賞者のコメントや動画を公開!

text by 編集部

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サッカー本大賞



 4月5日に、第10回「サッカー本大賞2023」授賞式がオンライン配信で行われ、優秀作品を表彰、各賞が発表されました。

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 サッカー本大賞2023の優秀作品9作品の受賞者よりコメント、動画が届きました!

大賞

競争闘争理論 サッカーは「競う」べきか「闘う」べきか?(ソル・メディア)
河内一馬(著)


参照元:YouTube

特別賞

女子サッカー140年史:闘いはピッチとその外にもあり(白水社)
スザンヌ・ラック(著)、実川元子(訳)

 このたびはサッカー本大賞特別賞に本書を選んでいただき、ありがとうございます。

 今年はオーストラリアとニュージーランドで第9回FIFA女子ワールドカップが開催されます。男子のワールドカップに遅れること61年、1991年に初めて中国で女子ワールドカップが開催されました。そう聞くと女子サッカーはまだ歴史が浅いと思われる方も多いと思いますが、本書には19世紀末にはすでに女子サッカー競技が行われていて、第一次世界大戦中に大人気のスポーツ競技だったことが描かれています。男子サッカーにひけをとらないどころか、それ以上の人気だったのです。それなのになぜFIFAが女子ワールドカップを開催するまでに長い紆余曲折があったのか? イングランドだけでなく、フランス、西ドイツ、ブラジルなど世界各国で1970年代まで50年にわたって女性がサッカーをすることを禁止されたのは何故なのか? 

 そこには、サッカーだけでなく女性がスポーツをするときにぶつかる壁があった、と本書は訴えます。「女性は男性に比べるとからだが弱いから、激しいスポーツをするのは危険だ」「サッカーのような男性向けスポーツをするのは女性らしくない」といった見方が、競技団体から一般社会にまで広くあったことが女子サッカー禁止令につながり、ひいては発展と普及に歯止めをかけたことを本書はあきらかにしています。そんな偏見や差別を乗り越えて、女性たちは140年にわたってサッカー競技を続けてきたのです。

 本書で女子サッカーの歴史を築いてきた偉大な先人たちを知っていただき、そんな歴史を乗り越えてニュージーランドとオーストラリアの晴れやかな舞台に立つ選手たちに、大きな声援と賞賛を送っていただければと願っています。

 本書は英国の全国紙ガーディアン紙とオブザーバー紙で「女子サッカー特派員」をつとめるジャーナリスト、スザンヌ・ラックによる初の書き下ろしです。女子サッカー特派員という肩書をつけて全国紙に記事を書くのも彼女が最初でした。女子サッカーをもっとよい競技にするための提言を、本書でも記事でも歯に衣着せずにずばずばと書くスザンヌ・ラックの勇気に賞賛を送ります。

 また、刊行にあたってさまざまなご意見をくださった木村元彦さん、日本女子サッカーの歴史と現状について教えてくださった松原渓さん、すばらしい帯の推薦文を寄せてくださった澤穂希さんにお礼を申し上げます。本書は「良質のサッカー本」を長く出し続けている白水社の編集者、藤波さんの尽力なしには日の目を見ませんでした。あらためて感謝を捧げます。

 最後に、特別賞に選んでいただいたことが、日本の、また世界各国の女子サッカーの発展にほんの少しでも貢献できれば、訳者としてこれ以上ないほどの喜びです。ありがとうございました。

実川元子

DO YOU SPEAK FOOTBALL? 世界のフットボール表現事典(イースト・プレス)
トム・ウィリアムズ(著)、堀口容子(訳)

 このたびは思いがけず、サッカー本大賞2023特別賞という栄誉ある賞に選出して頂き、本当にありがとうございます。本書が店頭に並ぶまでの全段階でお世話になった皆さまに、改めてお礼申し上げます。

 本書の訳者あとがきに書きましたが、私が海外サッカーを見るようになったのは、元アルゼンチン代表のガブリエル・エインセ氏に魅せられたからです。当時彼はイングランドでプレーしていましたが、その後、スペイン、フランス、イタリアと渡り歩き、母国アルゼンチンで現役引退しました。一ファンとして彼の動静を知るために、図らずも5カ国のサッカー報道を追うことになったのです。

 苦労しながら現地記事を読むうち、それぞれの国のサッカーへのこだわり、評価ポイント、その表現のしかたなどの違いをとても面白く感じるようになりました。会社員時代に担当した中南米各国の得意先が、同じ系列にも関わらず、仕事の手順やコミュニケーションの取り方に随分差のあったことも思い出されました。

 トム・ウィリアムズ氏の”DO YOU SPEAK FOOTBALL?”は、出会うべくして出会った本という気がします。

 本書には、世界中の人々の圧倒的な思いが溢れていました。こんなサッカーが好きだ、これが誇りだ、こんなことは許せない、と。同時に、こんな言い回しをしたい、この言葉が格好いい、というセンスの競い合いもありました。

 意識的か無意識かを問わず、プレーする人も、見る人も、語る人も、世界の誰もが自分をさらけ出し、表現するのがサッカーなのだと、本書は力強く謳っています。

 その力強さは、著者のウィリアムズ氏が単に多くの言葉を集めてひけらかすのではなく、1つ1つの表現の歴史的・文化的な背景を綿密に調査・確認されたところから来ています。いわゆるサッカー強国ではない国からも、人々がサッカーに向けるまなざしを拾い上げ、等しく尊重されたことが原文からはっきり伝わってきて、訳しながら襟を正す思いでした。ウィリアムズ氏の誠実さに、翻訳者として心から敬意を表します。

 原著が発行された2018年5月からこの日本語版が出た2022年6月までの間に、世界はパンデミックとロシアによるウクライナ侵攻を経験しました。本書を訳し始めた頃には、夢にも思わぬことでした。

 今この瞬間も恐怖と苦しみの中にある人々が、再びサッカーを楽しみ、自分たちの言葉でサッカーを語り合える日が来ることを願ってやみません。

 本日は本当にありがとうございました。

堀口容子

翻訳本大賞

バルサ・コンプレックス “ドリームチーム”から“FCメッシ”までの栄光と凋落(ソル・メディア)
サイモン・クーパー(著)、山中忍(訳)

 受賞の知らせを受け、大変光栄に思っております。30年近く前、デビュー作を読んで以来のファンであるサイモン・クーパー作品での受賞に喜びも一入です。冬のロンドンで翻訳を進めながら、眩しい日差しを羨んだり、リオハの赤ワインを買いに走ることもあった、ピッチ上を超越したバルセロナのリアルを日本語でも愉しんでいただければ幸せです。訳者として声を掛けてくださったfootballista編集部およびソル・メディアの皆様に改めてお礼申し上げます。

山中忍

読者賞

セリエA発アウシュヴィッツ行き~悲運の優勝監督の物語(光文社)
マッテオ・マラーニ(著)、小川光生(訳)

 サッカー本大賞・読者賞を受賞できたこと、大変に嬉しく光栄に思っております。読者のかたがたのネット投票による選出と聞き、喜びはさらに大きくなりました。アールパード・ヴェイスとその家族の物語は、私が数年をかけ何かに導かれるように調査を継続し、再構築したものです。そのストーリーを日本の方々とも共有できたことが、本当に嬉しいです。日本という国の素晴らしさについては、親友のアルベルト・ザッケローニ監督から何度も聞いております。近い将来、皆さまの国を訪れ、ご挨拶できる日を楽しみにしております。投票いただいた読者の皆様、ありがとうございました。グラッツェ・ミッレ!

マッテオ・マラーニ

 訳者の小川です。このたびは、私の訳書を読者賞に選んでいただきありがとうございました。ご投票いただいたすべての方々に感謝いたします。アルパード・ヴァイスの生涯を日本に紹介したいという思いは、ミラノ中央駅内の書店でこの本を見つけたときからの私の念願でした。作者のマラーニ氏も書いていますが、サッカー界、スポーツ界、あるいは実社会で人種差別を何らかの形で目にされたとき、悲しすぎる運命をたどったこの一家のストーリーをどうか思い出してください。人種(あるいは肌の色)で人を判断し、非難したり危害を加えたりすることがいかに愚かなことか。彼らの物語は、我々にそのことを改めて気づかせてくれる重要な警鐘だと思います。

小川光生

戦争をやめた人たち 1914年のクリスマス休戦(あすなろ書房)
鈴木まもる(著)

 この度は、栄えある「サッカー本大賞2023」の優秀作品に弊社絵本を選定いただき誠にありがとうございました。

 この絵本は、第一次世界大戦中にイギリスとドイツが激しい戦いをしている中、クリスマスイブを迎え両軍が共に「きよしこの夜」を歌いはじめて親交を深め、ついにはサッカーをはじめるという実話を描いたものです。

 戦争より強いのは、人に対するやさしさと想像力だということが感じられます。

 当時から、サッカーは、ヨーロッパの人々に愛されていたのですね。

 この絵本を通じて平和へのヒントが世界に伝わればと思っております。

 この度は、誠にありがとうございました。

担当編集者:山浦真一

TACTICAL FRONTIER 進化型サッカー評論(ソル・メディア)
結城康平(著)

 まだまだアカデミックな観点からサッカーというスポーツを解釈するアプローチは日本では一般的ではないかもしれませんが、今後のさらなる発展を願っています。今回の受賞により、こういったアプローチに興味を持つ方が増えることを祈っております。

結城康平

ONE LIFE ミーガン・ラピノー自伝(海と月社)
ミーガン・ラピノー(著)、栗木さつき(訳)

 サッカーを愛する皆さまから、「サッカー本大賞2023」の優秀作品に選んでいただき、とても誇らしい気持ちです。

『OEN LIFE:ミーガン・ラピノー自伝』には、いまやスポーツ界のみならず、世界で賞賛される存在となったラピノーの半生が、彼女らしくまっすぐに、開けっぴろげに綴られています。代表選手の舞台裏、国際試合の名場面など、サッカーの魅力を堪能できるのはもちろんのこと、そこには、人生においても自分らしさを貫いて勝利を手にしていく姿があります。

 バッシングにもめげず(大統領にも怯まず)、性や人種の差別にNOと言いつづける勇敢さ(それにカッコよさ)は圧巻です。読み進めるうちに勇気が湧いてきます。誰かが不当な扱いを受けているときは、見て見ぬふりをしないでNOと言おう。みんなが力を合わせれば、きっと変えていける──と。

 それは、日本に生きる私たちにも必要な勇気なはずです。この国のスポーツ界や社会に、まっとうな自由や平等が実現するためにも、これからもたくさんの方に読んでいただきたいと願っています。

 この度の栄誉は、その大きな励みとなりました。感謝でいっぱいです。

本書チーム一同

フットボール代表プレースタイル図鑑(カンゼン)
西部謙司(著)

 このたびは優秀作品賞に選んでいただきありがとうございます。ワールドカップ本ということで、その性質上企画力が8割かなと思っています。企画はカンゼンさん。そして授与するのもカンゼンさん。なんか自分で自分を褒めてあげる感じですが(笑)、『フットボール批評』の長年の功績に少しでも報いられたのであれば著者として大変うれしく思います。

西部謙司

【サッカー本大賞とは】

良質なサッカー書籍が、日本のサッカー文化を豊かにする。
2014年(平成26年)に設立された、サッカーに関する書籍を対象にした文学賞です。
良い本はサッカーの見方を豊かにしてくれます。また、日本でサッカーがナンバー1スポーツになり、世界に誇れるサッカー文化を築いていくためには、高い志と情熱をもって作られた良質なサッカー書籍がもっともっと多く世に出て、多くの人に読まれて欲しいと思っています。サッカー本大賞の創設はそうした思いが出発点になっています。

【了】

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