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“降参”に近いアーセナルの大敗。なぜ大差? 完璧だったマンCのプランとは【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

完璧だったマンチェスター・シティのゲームプラン


 一方のマンチェスター・シティは公式戦16試合無敗というこの試合までの流れも、対アーセナルというゲームプランも完璧だった。バルセロナで3回、バイエルン・ミュンヘンで3回、マンチェスター・シティで4回リーグを制している名将は、アーセナルを撃破して今季のリーグ戦を制するための道筋が見えていた。

 この試合でマンチェスター・シティが意識していたのは、相手の脅威となる位置でデ・ブライネとアーリング・ハーランドの両選手にボールを触らせることだった。アーセナルのハイプレスを回避する意味もあって、この試合を通じてノルウェー代表FWにシンプルなロングボールを送る機会が多かった。

 それもアーセナルが前掛かりになったタイミングで前線にロングボールを入れるため、ハーランドにボールが収まった時点でマンチェスター・シティの選手とハイラインの相手DF陣はほぼ数的同数となる。となれば、彼らが通常通りのクオリティを発揮すればチャンスが生まれる。7分の先制点はこの形からストーンズからハーランドへ、そしてハーランドからデ・ブライネへと渡った、“2本のパス”でアーセナルからゴールを奪ってみせた。

 そして守備でもペップシティは抜かりなかった。アーセナル最大のストロングポイントであるブカヨ・サカとガブリエウ・マルティネッリの両WGに対して、マヌエル・アカンジとカイル・ウォーカーという対人戦に強い2人のDFを配置。加えてサカ、ウーデゴール、ベン・ホワイトと3選手で攻撃をしてくるアーセナルの右サイドに対しては、左WGのジャック・グリーリッシュにプレスバックを徹底させることで、サイドから攻撃の起点を作らせなかった。

アルテタ監督がこの試合でマルティネッリ、ジャカ、ウーデゴール、サカ、ガブリエウ・ジェズスという中心選手たちをベンチへと下げたのは、かつての師匠に対する“降参”とも見て取れた。

 こうして今季のプレミアリーグの“天王山”は決した。今節の勝利でマンチェスター・シティは直近の17試合で14勝3分と圧倒的な強さを誇っている。すべての分野において完成度の高い彼らを止めることのできるチームはないだろう。
(文:安洋一郎)

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