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久保建英 11か月前

シメオネの策に苦しんだ久保建英。名将が徹底したアトレティコのソシエダ対策とは【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 編集部 photo by Getty Images

CL権獲得。久保建英は立役者に



 しかし、シメオネ監督にしてやられたソシエダだが、冒頭にも記した通り、この敗戦によるショックは大きくなかった。同日に試合を行っていた5位ビジャレアルが負けたため、ソシエダの来季チャンピオンズリーグ(CL)出場が確定したのである。2013/14シーズン以来、実に10年ぶりのことだ。

 チーム全員で掴み取った歓喜であることは言うまでもないが、あえてシーズンMVPを選出するならば、贔屓目なしに久保となるだろう。加入1年目ということを加味しても、今季は満点に近い働きぶりだった。

 久保は今季、安定して好パフォーマンスを披露してきた。ラ・リーガ最多となる9回のマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)に選出されている事実が、それを大きく証明している。2トップの一角、左右両サイド…。どこで出場しても輝きを失わなかったのは、若き日本人の頭の良さゆえだろう。

 クラブの象徴的存在であるオヤルサバルが大怪我から復帰した直後のソシエダは、それまでの4-3-1-2から4-3-3にベースを移行したこともあり、大きく調子を落としていた。しかし、終盤戦では復調。日程が少し緩くなった影響も多少はあるかもしれないが、大きかったのは久保の存在だ。オヤルサバルのコンディションがトップに戻り切らない中、日本人レフティーが右サイドで脅威になり続けたからこそ、“オヤルサバル用システム”とも言える4-3-3で戦い続けることができた。もし久保が右サイドで輝かなければ、この4-3-3は他クラブにとって怖くなかったはずだ。

 また、シメオネ監督の言葉にもあった通り、久保はチームを勝利に導くことができる“決定的な選手”へと変貌を遂げた。マジョルカやヘタフェではそもそも攻める時間が少ないのでゴールやアシスト数の少なさに関しては多少目を瞑ることができたが、その2クラブとはポジションが違うソシエダでは言い訳ができない。そうしたプレッシャーもある中で、リーグ戦16得点に直接関与したのは見事という他ない。

 チームとしての目標は達成した。しかし、久保にはまだ目指すべきものがある。リーグ戦2桁得点への到達だ。最終節のセビージャ戦で、久保が最後の大仕事を果たすのか注目である。

(文:小澤祐作)

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