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海外サッカー 11か月前

ペレは4秒、マラドーナは2秒、メッシは1秒以下。高速化するサッカーで鍛えるべき「無意識」【ヴィセラルトレーニング1】

text by ヘルマン・カスターニョス photo by Getty Images

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 アルゼンチン代表は昨年行われたFIFAワールドカップカタール2022で、36年ぶり3度目の優勝を果たした。神経科学を実用的に応用して無意識をトレーニングする、サッカー大国アルゼンチンで生まれた先鋭のトレーニング理論がある。ここでは、新著『フットボールヴィセラルトレーニング』を一部抜粋して紹介する。(文:ヘルマン・カスターニョス、監修:進藤正幸、訳:結城康平)


高速化するサッカーに必要な「無意識」

左ペレ、中央メッシ、右マラドーナ
【写真:Getty Images】

「時速200キロメートルで走行するパイロットが、時速100キロメートルのスピードでトレーニングすることはない」
―アリゴ・サッキ(元イタリア代表・元ミラン監督)

『フットボールヴィセラルトレーニング
無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論[導入編]』
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 この問題を、元アルゼンチン代表のFWホルヘ・バルダーノは端的にまとめている。

「ペレは解決に4秒を必要とした。マラドーナは2秒であり、メッシは1秒以下で解決する」

 それでは、リオネル・メッシ以降の選手はどのくらいの時間を使えるのだろうか? 数年前の学会で私は、バルダーノの主張を補強する研究を知った。おそらくサッカーを観戦している方であれば、400ページの論文を読まなくても感覚的に知っているはずだ。今や1秒に満たないレベルで、正確な判断が求められるようになっている。不可能な理想ではあるが、メッシを育ててマラドーナの時代にプレーさせられれば最高だろう。ただ、実際に指導者は近未来に活躍する選手を育てていかなければならない。スペイン代表の監督を務めたビセンテ・デル・ボスケは選手のテクニックが過去と比べてレベルアップしているかをインタビューで問われ、次のように答えている。

「大きな差があるようには思えないが、現代サッカーではすべてがスピードアップしている」

 エスパニョールの前監督ディエゴ・マルティネスも、次のように述べている。

「もし現在のようにスペースが狭くなり、時間が失われていくサッカーが続けば、長期的には技術的な発展があるはずだ。なぜなら選手たちには狭いスペースで、高速化したプレーが求められるのだから」

 サッカーの高速化は進んでおり、今後もそれは続いていくだろう。神経科学はサッカーにも導入されているが、まだまだ発展途上の領域でしかない。特にサッカーに特化した領域の神経科学は、まだ一歩を踏み出したところにすぎない。高速化は、我々から時間を奪う。その結果として、選手たちは「決めるべき時間」を失いつつある。また、スピードは意識する時間も奪っていく。

 例えば4秒あれば、意識する時間はあるだろう。しかし1秒以下での判断を求められたとき、そこには無意識的な脳の反応しかない。無意識的な反応をコントロールし切れなければ、結果として良いプレーをすることは難しい。選手を意識から解放することは簡単ではなく、無意識的な反応を鍛えることも究極の難題だ。無意識のトレーニングを構築するには、まず「無意識とは何か?」を理解しなければならない。

(文:ヘルマン・カスターニョス、監修:進藤正幸、訳:結城康平)

<書籍概要>

『フットボールヴィセラルトレーニング
無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論[導入編]』

ヘルマン・カスターニョス 著
進藤正幸 監修
結城康平 訳
定価:2,860円(本体2,600円+税)

アルゼンチン発 科学×本能の融合
教育・芸術の創造性にも通ずる「無意識」をトレーニングする新たなパラダイム
神経科学の実用→瞬間的な認知の獲得→プレー実行スピードの加速

アーセン・ヴェンゲルは「サッカーの試合を変革する次のカギは、神経科学だ。次に学ぶべきステップは、脳のスピードなのだ」と言った。なぜなら、現代サッカーは肉体的、戦術的ともにもはや極限のレベルに到達し、リオネル・メッシが1秒でプレーを解決するように、今や無意識下でのプレーを覚醒させるフェーズを迎えているからだ。2022年のカタール・ワールドカップを制したアルゼンチン生まれの「ヴィセラルトレーニング」は、神経科学を実用的に用い、無意識をトレーニングすることで、瞬間的な認知を可能にし、プレー実行スピードを加速させる。ドリルトレーニング、アナリティックトレーニングといった伝統のトレーニングを覆し、エコロジカルアプローチ、ディファレンシャルラーニングのさらに上を行く、「本能、直感を刺激する」先鋭のトレーニング理論がいよいよベールを脱ぐ。

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【了】

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