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海外サッカー 11か月前

「考えることは重荷になる」メッシの創造性を生む無意識の力「脳を車に接続し、自動運転する」【ヴィセラルトレーニング2】

text by ヘルマン・カスターニョス photo by Getty Images

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 アルゼンチン代表は昨年行われたFIFAワールドカップカタール2022で、36年ぶり3度目の優勝を果たした。神経科学を実用的に応用して無意識をトレーニングする、サッカー大国アルゼンチンで生まれた先鋭のトレーニング理論がある。ここでは、新著『フットボールヴィセラルトレーニング』を一部抜粋して紹介する。(文:ヘルマン・カスターニョス、監修:進藤正幸、訳:結城康平)


すべてをコントロールしようとするのをやめる

FIFAワールドカップカタール2022決勝戦、フランス代表戦でのリオネル・メッシ
【写真:Getty Images】

 考えることは、決断における重荷になる。リオネル・メッシは、2つのコメントでそれを裏づけている。

『フットボールヴィセラルトレーニング
無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論[導入編]』
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「ドリブルやこれから何をするかについて考えたり、トレーニングしたりすることはない。私はストリートでプレーするときと同じように、瞬間的に出てくるプレーを選択する。それはインスピレーションだ。問題があれば、その瞬間に解決する。事前に決められたものは、何もない」

「きれいなゴールを決めることを考えたことはない。もしそれを考えれば、ゴールは決まらない」

 メッシの考えは正しく、内なる自分がリラックスし、すべてをコントロールしようとするのをやめると、創造性が促進される。外側前頭前皮質(自己監視)における脳の活動が少なく、内側前頭前皮質(自己表現)では脳の活動が高まっていくのだ。ロナウジーニョは「創造は、計算よりも遠くに私たちを導く」と表現した。また、1992年にF1の世界を席巻したナイジェル・マンセルは「脳を車に接続し、自動運転している」と述べた。

 ここでは特に、マンセルの比喩的表現に注目しよう。言い換えれば、彼は「F1の速度を意識的に管理することは不可能だ」と主張している。最高速度は、意識と両立しないのだ。多くのレジェンドたちが歴史をつくった瞬間において、もし意識が動きを支配していたら、そのスムーズな動きを阻害していたはずだ。意思決定の質は、意思決定に使用されている脳の処理に必要な互換性のレベルと、意思決定におけるタスクの性質に依存している(相手に囲まれながらドリブルで突破するのは、パソコンの前に座ってホットコーヒーを飲みながらExcelシートを完成させるのと同じではない)。

 ラグビー選手に関する意思決定の研究において、アシュフォードらは次のように主張している。彼の発言は、試合の迅速な性質を象徴している。

「選手の行動に関するゆっくりとした思考の言語化は、迅速な思考と無思考の分別よりも頻度が低かった」

(文:ヘルマン・カスターニョス、監修:進藤正幸、訳:結城康平)

<書籍概要>

『フットボールヴィセラルトレーニング
無意識下でのプレーを覚醒させる先鋭理論[導入編]』

ヘルマン・カスターニョス 著
進藤正幸 監修
結城康平 訳
定価:2,860円(本体2,600円+税)

アルゼンチン発 科学×本能の融合
教育・芸術の創造性にも通ずる「無意識」をトレーニングする新たなパラダイム
神経科学の実用→瞬間的な認知の獲得→プレー実行スピードの加速

アーセン・ヴェンゲルは「サッカーの試合を変革する次のカギは、神経科学だ。次に学ぶべきステップは、脳のスピードなのだ」と言った。なぜなら、現代サッカーは肉体的、戦術的ともにもはや極限のレベルに到達し、リオネル・メッシが1秒でプレーを解決するように、今や無意識下でのプレーを覚醒させるフェーズを迎えているからだ。2022年のカタール・ワールドカップを制したアルゼンチン生まれの「ヴィセラルトレーニング」は、神経科学を実用的に用い、無意識をトレーニングすることで、瞬間的な認知を可能にし、プレー実行スピードを加速させる。ドリルトレーニング、アナリティックトレーニングといった伝統のトレーニングを覆し、エコロジカルアプローチ、ディファレンシャルラーニングのさらに上を行く、「本能、直感を刺激する」先鋭のトレーニング理論がいよいよベールを脱ぐ。

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【了】

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