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アーセナルの“癖”が招いた冨安健洋の退場。バラバラの判断基準で潰されたチャンス【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

アーセナルの癖が招いた冨安健洋への警告



 1枚目のイエローカードを貰ったのは60分だった。

 アーセナルのスローインの場面で、最初はカイ・ハフェルツがボールを持っていたのだが、その後スローワーが冨安に移った。この時点でかなり時間がかかっており、ホームサポーターからもブーイングを飛ばされていたが、ボールを託された冨安はなかなかピッチに放り込まず、遅延行為により警告を受けている。

 結果的に“遅延行為”にはなったものの、アディショナルタイム含め残り30分以上もある中で露骨な時間稼ぎに出るのは不自然だ。映像を見ればすぐに理解できるが、冨安はボールの出しどころに迷っていただけであり、これは受け手側にも問題があると言えるだろう。

 ボール保持を基本とするアルテタ・アーセナルは、昨季からスローインをスムーズに進められない傾向にある。負けている時であっても例外ではない。もはやチームの1つの癖なのだ。

 今季のプレミアリーグは、主審に対する異議や遅延行為、反スポーツ的行為に対してより厳しいジャッジを下すことを決めている。ブライトン対ルートン・タウンではドリブルを止められた三笘薫がボールを蹴り出したことでイエローカードを貰った。リバプールのアレクシス・マック・アリスターは、第1節チェルシー戦で自身がファウルを受けながら、主審に「相手にカードを出せ!」と抗議したことで警告を受けている。

 さらに、第1節のチェルシー対リバプールでは、トレント・アレクサンダー=アーノルドがスローインの場面で遅延行為を取られ、イエローカードを提示されていた。これまでは、一度笛を吹いて早く投げるよううながし、それでもボールを放り込まなければイエローカードを出す主審もいたが、アレクサンダー=アーノルドは1度目の笛でアウトだった。より厳しくなっている証拠だろう。

 アーセナルもそれらを知らなかったわけではないはずだ。冨安の1枚目に関してはチーム全体の問題であり、擁護するのは難しいだろう。

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