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震えるほど恐ろしい。ライスがアーセナルにもたらす「プラス」と「マイナス」【分析コラム】

text by 竹内快 photo by Getty Images

ゴール以外にも際立っていたライスの貢献



 アーセナル史上最高額となる移籍金1億500万ポンド(約168億円)で加入したライスは、中盤の選手としての完成度が極めて高い。身長188cm、体重80㎏の恵まれたフィジカルを活かした力強い守備は、もはや中盤の選手のレベルではなく、センターバックとしてもプレーできる。昨季はウエストハムで1試合当たり、インターセプト数がリーグ3位の1.7回、ロングパス成功数がチーム1位となる4.1回を記録。(データサイト『Sofa Score』参照)ボールを奪って、正確なパスで味方のチャンスを演出することが可能だ。

 劇的な逆転ゴールに目がいきがちだが、この試合でもライスの守備は際立っていた。

 12分、ライスはブルーノ・フェルナンデスからボールを奪うと、エディ・エンケティアの助けを借りて、右ウイングのガブリエウ・マルティネッリまでボールを繋げることに成功。マルティネッリが上げたクロスは最終的にカイ・ハフェルツの足元に転がり、ゴール前で大きな決定機が生まれた。

 55分にもライスのプレーがアーセナルにチャンスをもたらす。アントニーが出したパスをカットして相手MFの間を縫ったドリブルでボールを運ぶと、フリーのマルティネッリにパス。12分のプレーと同様にライス、マルティネッリでボックス内にいる味方にボールを届けた。

 どちらのシーンも結果的にゴールには結びつかなかったが、ライスの守備が攻撃の起点となり、味方の決定機を作り出している。

 またライスの味方選手へスペースを作り出す動きも素晴らしかった。42分、アーセナルが押し込んでいる状態でライスはマルティン・ウーデゴールにボールを預けると、バイタルエリアに走り込む。これにユナイテッドのディフェンス4人が反応し、一瞬ユナイテッドの守備ブロックはやや右寄りとなった。ライスのこの動きは左サイドにスペースを作り出し、マルティネッリのシュートに繋がっている。

 ライスは自身が持つ個の能力が圧倒的であることを証明した。しかし一方でこの試合は、ライスの課題をより鮮明なものにさせている。

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