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アーセナルはなぜ勝ち点3を取り逃がしたのか。疑問だらけ? なアルテタ監督の采配【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

2つの疑問が残るアルテタ監督の決断



 試合終盤、アルテタ監督は2人の選手をベンチに下げた。改善すべき点なのはその交代カードの切り方である。試合の流れ、残り時間を考えると、アルテタ監督の交代策には間違いがあったと言わざるを得ない。

 まず1つ目の疑問点は、77分にエディ・エンケティアではなくジェズスを下げたことだ。1試合を通してエンケティアは、ウーデゴールと共にトッテナムのセンターバック2枚(クリスティアン・ロメロとミッキー・ファン・デ・フェン)にプレッシャーをかけていたのだが、試合時間が進むにつれ、そのプレスの強度にムラがでていた。

 エンケティアが集中を切らし1テンポ出遅れたプレスをするために、相方であったウーデゴールが疲弊する悪循環を招いている。相手選手に対する危険なスライディングタックルも含めて、この試合のエンケティアは残念なプレーが目立った。77分の交代はエンケティアを下げ、ジェズスを1トップに置くという形でも良かったのではないだろうか。

 2つ目の疑問点が、サカを下げるタイミングの遅さである。アルテタ監督がサカとスミス・ロウを交代したのは90+7分。ヘイルエンド産の10番に与えられた時間はわずか3分ほどだった。右サイドでトッテナム守備陣の脅威となり続けたサカは、試合終盤足を引きずるようになり、通常よりもゆっくりと走るシーンが見られた。昨季リーグ戦全試合に出場したエースを、防げる可能性が高い負傷で失うのは最悪のシナリオだ。突破力に優れたサカに賭ける思いも十分理解できるが、スミス・ロウやリース・ネルソンに勝負させてもよかったのではないか。

 昨季のアーセナルと明確に違うのは選手交代を行っても、その強さを維持できるポテンシャルを持ったタレントがベンチに多く控えていることだ。選手交代は試合の戦況を変える毒にも薬にもなり得る。1試合1試合の勝利を手繰り寄せるには、プレッシャーが重くのしかかる難しいシーズンを乗り越えるためには、若き指揮官の柔軟な采配が必要だ。

(文:竹内快)

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