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確実に近づくハフェルツ覚醒の瞬間。アーセナルに必要な「数字に残らない功績」【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

数字に残らないハフェルツの功績



 1試合を通して、ハフェルツのサッカーIQの高さが改めて伺えた。気の利いたポジショニングで味方からパスを引き出したり、相手選手のマークを引き付けてスペースを作り出している。鋭い縦パスで自らチャンスを作り出すシーンは少なかったが、インサイドハーフとしてパス成功率91%は上々の出来だろう(データサイト『SofaScore』参照)。

 右WGブカヨ・サカとの流動的なポジションチェンジは、新たな可能性を感じさせた。サカがインサイドに入ってきたタイミングで、ハフェルツはウイングのようにワイドエリアへ移動。ハフェルツが2列目からサイドに張った位置へ動くことで、前線に5人の選手が並び、相手最終ラインを左右に引き延ばした。突破力のあるサカがよりゴールに近い位置で仕掛けることを可能となる、「サカの自由化」に成功したのはハフェルツの功績だ。

 サカのみならず、右SBベン・ホワイトとの関係性も良く、エンケティアの先制点は3人の“数字に残らない”プレーが生み出したものと言える。シェフィールドの“守備の緩さ”もあったが、MFデクラン・ライスがエンケティアにラストパスを出すためには、ハフェルツのオフ・ザ・ボールの動きが必要だった。

 相手MFアニス・ベン・スリマンの背後で右SBベン・ホワイトのパスを引き出すと、サカにボールを預けてそのままフリーランニング。ライスがボールを持った時、相手選手たちの注意はボックス内に陣取るハフェルツ、ワイドに張るサカ、そしてオーバーラップしてきたホワイトに向いており、「右サイドからこじ開けてくる」と思ったタイミングでライスが中央にパスを出したからこそ生まれたゴールだった。

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