フットボールチャンネル

トッテナムを変えたポステコグルー流マネジメント。マリノス時代から変わらぬ手法【コラム前編】

シリーズ:コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

すぐに結果を出せた理由

【写真:Getty Images】


 横浜F・マリノス時代から知るサポーターからすれば、ポステコグルーのチームは完成するまでに時間を必要とするイメージがあるだろう。実際に同クラブ就任初年度の2018年シーズンは降格した柏レイソルと勝ち点2差の12位でフィニッシュと、残留争いに巻き込まれていた。

 一方のトッテナムでは開幕10試合で8勝2分という最高のスタートダッシュに成功している。その間の対戦カードが昇格組の3クラブを筆頭にボトムハーフのクラブが多かったことや、欧州カップ戦がないことによる日程的な優位性があったとしても、序盤から勝ち点を積み上げられたことは素晴らしい結果だと言えるだろう。

 これだけ早くから結果という面で成果をあげられたのは、ポステコグルーの戦術にフィットする選手が数多くチームにいたことに依る部分が大きい。特に大きかったのが、今夏に獲得したグリエルモ・ヴィカーリオやミッキー・ファン・デ・フェン、ジェームズ・マディソンの3選手の存在である。

 今季のトッテナムは第12節終了時点で挙げた8勝のうち、7勝が2点差以内と接戦をモノにできている。その立役者となっているのが、昨季プレミアリーグで最多の失点に直結するミスを犯したウーゴ・ロリスに代わって正GKを任されているヴィカーリオだ。試合の勝敗に直結する場面でのビッグセーブが多く、彼が絶体絶命のピンチを彼が防いだことで、結果的に自分たちの流れになるという試合展開が多い。

 ヴォルフスブルクから加入したCBファン・デ・フェンは、加入当初こそ空中戦の弱さを懸念されていたが、今ではポステコグルー監督の代名詞でもあるハイライン戦術に欠かせない選手となっている。アグレッシブに前に出る守備が得意な相方のクリスティアン・ロメロに対して、この若きオランダ代表DFは背後のスペースを一人でカバーできる圧倒的な走力がある。両CBの補完性は抜群で、彼のスピードがチームを救った場面は序盤戦だけでも数多くあった。

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top