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ジダンがレアル・マドリードで覚えた処世術。W杯の頭突きにまつわる神話学【ジダン研究後編】

シリーズ:フットボール批評オンライン text by 石沢鉄平 photo by Getty Images

レアル・マドリードで覚えた処世術

レアル・マドリード時代のジネディーヌ・ジダンとラウール・ゴンザレス
【写真:Getty Images】



――それに加えて、当時のサッカー界全体が、今で言うアンカー役への評価がすこぶる低かったように感じます。マケレレの退団後に加入した同タイプのトーマス・グラヴェセンもすぐ放出された記憶があります。

「もし、現在、フロレンティーノ・ペレスがこのポジションは評価に値しない的なことを発言したら、SNS界隈が黙っていないでしょうね。今はさまざまなツールに気を遣わないといけない時代ですよね」

――レアルでの処世術を覚えたジダンは、2002年のチャンピオンズリーグ決勝で伝説的なボレーシュートを決めました。これも近代サッカー史からは外せない出来事の一つです。

「もう数百回、DVDを観ています。実は大学での講義の前にも学生にこのDVDを見せて、『これがハートに訴えるものでなければ、履修しないほうがいい』と言っています。このゴールに関心を持てないようだと、例の10・06の試合には辿り着けません、と」

――まるで「逆踏み絵」のよう(笑)。レアル時代で言えば、デシャンが率いていたモナコとのCL準決勝も印象的です。特にジェローム・ロタンのジダン批判は秀逸です。

「ジダンを批判したロタンの自伝はAmazonのレビューが盛り上がっていて、ジダニストに『ジダンがそんなことを言う訳がない。お前の勝手な思い込みだ』などと書き込まれています。ジダンがロタンにマルコ・マテラッツィに言われたようなことを言ったのかどうかは確かめようがないにせよ、世間からジダンが偉く思われすぎている嫌いはありました。ジダンだって好きなことは言うだろう、と」


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