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【アーセナル・分析コラム】カオスと制空権が導いた大勝。苦手なウェストハム撃破の陰に「2人の立役者」あり

2024年02月12日(月)13時34分配信

シリーズ:分析コラム
text by 竹内快 photo Getty Images
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中盤の「カオス」と「制空権」

アーセナルに所属するイングランド代表FWブカヨ・サカ
【写真:Getty Images】



 スターティングラインナップにトロサールとハフェルツの名前が並んだ時、どちらがセンターフォワード(CF)の役割を担い、どちらが中盤でプレーすることになるのか困惑した人も多いだろう。現在ミケル・アルテタ監督率いるアーセナルで1トップのファーストチョイスであるガブリエル・ジェズスは負傷離脱中で、本職CFはエディ・エンケティアのみ。前節リバプール戦ではハフェルツがCFとして先発していた。複数ポジションで起用できるトロサールもハフェルツとともにCFの選択肢の1つであり、ジェズス不在の穴をどちらが埋めるのかが注目ポイントだった。

 結論から言うと、試合が始まってもこの疑問は解消されることは無かった。立ち上がりはハフェルツがトップに立っているかと思えば、数分後にはトロサールがCFの位置に立ち、ハフェルツがインサイドハーフへ。試合を通してトロサールの方がCFに、ハフェルツがインサイドハーフになる時間が長かった印象はあるが、彼らは流動的な動きで絶えずお互いのポジションを換えていた。

 
 これがウェストハムのディフェンスに大きな影響を与えることになる。

 アーセナルの[4-3-3]に、アウェイチームは[4-4-1-1]を組んで対応した。攻撃的MFジェームズ・ウォード=プラウズがアンカーのライスを監視し、MFエドソン・アルバレスが右インサイドハーフ(IH)のウーデゴールを監視。ウォード=プラウズはライスの動きに合わせてより高い位置までプレッシャーをかけるので[4-4-2]のような守備陣形を形成すると言った方が分かりやすいかもしれない。

 ここでウェストハム側に発生するのが「トマーシュ・ソウチェクは誰をマークすれば良いのか」という問題だ。アルバレスとダブルボランチを組んだソウチェクは、ハフェルツをマークしようとするがボールの動きに合わせてハフェルツは前線に上がり、代わりにトロサールが中盤に降りてくる。ハフェルツについて行ってしまえばトロサールがフリーになってしまう現象が発生した。

 トロサールとハフェルツはCF-IH間の「縦の位置交換」だけでなく右IHウーデゴールや左WGガブリエル・マルティネッリ、右WGサカとも一時的に位置を交代する「横の位置交換」も行うため、彼らのマークを担当するMFアルバレス、右SBヴラディミール・ツォウファル、左SBエメルソンもシームレスなマークの受け渡しに苦戦気味。加えてアーセナルは右SBベン・ホワイトや左SBヤクブ・キヴィオルが「偽SB」として中央に絞った位置を取るため、中盤に色々なポジションの選手が入ってくる状況が完成。ここにウェストハムの選手たちを悩ませることになる、中盤の “カオス”が生まれた。

 このような“カオス”を使って、トロサールは何度もアルバレスとソウチェクの間に降りてライスからのパスを引き出し、自らボールを前進させている。29分にはライスからパスを受けて、精度の高いロングパスでワイドに張っていたマルティネッリに展開する好プレーを見せている。

 またこの“カオス”は空中戦に強いハフェルツを、中盤と前線の両方で使うことができるという副産物付きだ。ウェストハムはGKアルフォンス・アレオラのロングフィードを身長192cmのソウチェクが落として展開するプレーを今季多くの試合で見せており、アーセナルが中盤の制空権を握るためにはソウチェクの高さを無力化することが必須。そこで要所要所でハフェルツ(身長193cm)をソウチェクに当て、ウェストハムのロングボールをマイボールにすることを可能にした。ハフェルツはこの試合で空中戦勝率75%(6/8回勝利)を記録している(データサイト『Sofa Score』参照)。

 トロサールとハフェルツが同時に出場していた約70分間を通して、彼らが中盤に作り出した「カオス」とその副産物である「制空権」奪取は確実にウェストハムにダメージを与えていた。2選手が関わった数あるプレーシーンの中で、その効果が最大限発揮されていたのが37分のシーンだ。

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