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【アーセナル・分析コラム】カオスと制空権が導いた大勝。苦手なウェストハム撃破の陰に「2人の立役者」あり

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

トロサールとハフェルツが起点になったサカのPK奪取



 トロサールが何度も中盤まで下りてきてハフェルツとの位置交換を行ったことで、ウェストハムのディフェンスは混乱し、マークの受け渡しに苦慮。右に位置取ったモハメド・クドゥスや左のベン・ジョンソンはソウチェクやアルバレスを助けることは出来ず、終始アーセナルは誰かがフリーになれる状況が作られていた。

 サカが相手DFラインの裏へ抜けてPKを奪取した37分のシーンは、ハフェルツとトロサールが起点となっている。

 GKアレオラのゴールキックを、高いジャンプでソウチェクよりも先に触ったハフェルツは、前方にいたトロサールへボールを落とす。ボールを貰ったトロサールはそのまま中盤の底まで降りてきた。そのサカの裏抜けは、トロサールが低い位置を取ってハフェルツとゆるやかなポジションチェンジをする過程で行われた。ウェストハム側はソウチェクがハフェルツをマークし、アルバレスがウーデゴールへのパスコースを遮断していたつもりだったが、ウォード=プラウズもウーデゴールを警戒してしまっている。映像をよく見るとアルバレスもウォード=プラウズも時間差でウーデゴールを目視しており、ノルウェー代表MFへの強い意識からお互いに“出し手”のトロサールへプレッシャーをかける仕事を譲り合ってしまった形になった。

 3選手の意識が“受け手”に集中したことで前方にスペースが生まれたトロサールは、余裕をもってサカの動き出しに合わせた高精度なロングパスを繰り出した。そのキック技術は言うまでもなく、ここで周囲の選手ではなくひとつ向こうのサカを見ていたFWらしからぬ視野の広さにも流石の一言。ハフェルツの空中戦の強さと、試合中に何度も起こっていた中盤のカオスが分かりやすく表れていたシーンだと言えるだろう。

 トロサールとハフェルツを先発起用し、描いたシナリオ通りに試合を進めたミケル・アルテタ監督の好采配が光る試合となった。前半で4ゴールを奪うという上手く行き過ぎた感も否めないが、早いうちに試合が決まったことでユース出身の16歳イーサン・ヌワネリを試すことが出来た。難敵相手の大勝は、優勝争い中のチームに間違いなく大きな自信をつけたはずだ。

(文:竹内快)

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