フットボールチャンネル

【アーセナル分析コラム】今が「最強」だと言える理由。ブライトン戦で再確認した、異常なまでの“こだわり”とは?

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

全員に共有された守備の意識


【写真:Getty Images】



 ブライトンはオレクサンドル・ジンチェンコが守るアーセナルの左サイドを起点に攻撃を展開してきた。これに対してアーセナルはFWカイ・ハフェルツとMFマルティン・ウーデゴールを前線に配置した[4-4-2]で守るが、ブライトン得意の”引き付けてからの”縦パスや個によるドリブル突破でハイプレスを掻い潜られ、深い位置までボールを運ばれるシーンも。シモン・アディングラを中心としたホームチームの速攻の脅威は決して小さくなかった。

 それでもブライトンの枠内シュートをわずか2本に押さえ込み、3-0の完勝に成功したのは、運動量とチームディフェンスの練度で相手を上回ったからである。誰一人として守備に手を抜く選手がいなかった。

 カウンターを受けると前線の選手がトップスピードでペナルティエリア手前まで戻り、中盤の選手と共に密集状態を作って中央のパスコースを封殺。ブライトンはサイドにボールを振ってアーセナルのブロックをワイドに引き延ばすことを狙ったが、アウェイチームはそれに全くラグの無いスライドを見せて対処した。

 これに大きな役割を果たしたのがジョルジーニョだ。32歳のイタリア代表MFはフィジカル勝負には不安があるものの、味方と連動した守備にはトップクラスのクオリティを持っている。[4-4-2]の守備ではデクラン・ライスとともに相手MFに圧力をかけ、最終ラインから長いパスを蹴らせて後ろで味方がボールを回収するサイクルを構築。[4-4-2]よりさらに引いて守る[4-5-1]では、両CBの空けたスペースを埋める役割や、マイナス方向へのクロスを警戒する役割を担った。流動的な動きで1つのスライムのように見えるアーセナルのブロックには、ジョルジーニョの細かな動きが欠かせない。

 アーセナルの2点リードで迎えた試合終盤には、選手交代によってブロックの堅さがさらに増すことになる。ブライトンに狙われていたジンチェンコに代えて冨安健洋を、サイドにはレアンドロ・トロサールとガブリエル・マルティネッリを投入。サイドの攻守における運動量は維持されるどころか、さらに増して相手を苦しめた。最終的に、アーセナルの選手たちの「全員守備」の意識はトロサールの美しいゴールへと繋がっている。

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top