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海外サッカー 1か月前

【欧州CL分析コラム】冴えわたったアルテタ采配。アーセナルが一度失った流れを取り戻した方法とは

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

アルテタ監督が加えた最初の修正


 アルテタ監督は後半開始と同時に左SBのヤクブ・キヴィオルに代えてオレクサンドル・ジンチェンコを投入した。

 この交代の即効性は抜群だった。前半のキヴィオルのボールタッチ数は最終ラインの選手でダントツ少ない27。後半に同じポジションでプレーしていたジンチェンコが52タッチ記録したことを踏まえると、前半と後半で左SBの役割が変わったことがわかるだろう。

 前半の問題点は保持時にキヴィオルがあまりに機能していなかったことだ。バイエルンがアーセナルの強みである両WGにダブルチームで対応する中で、初めからポーランド代表を放置。本職がCBであるキヴィオルは積極的にビルドアップに関わるタイプでもない上に高い位置での攻撃参加も得意としておらず、彼へのケアはあまり重要ではなかった。

 キヴィオルがビルドアップに関わらない影響は他の選手の立ち位置にも影響を与えていた。左のインサイドハーフで先発出場していたデクラン・ライスも低い位置でプレーする機会が多く、そのためアーセナルの左サイドの攻撃はガブリエウ・マルティネッリの突破力頼みという状況に。ここにダブルチームを当ててくるバイエルンの守備との相性は最悪だった。

 ほぼ機能していなかった左サイドからの攻撃に変化をつけるべく投入されたのがジンチェンコだった。彼自身のパフォーマンスそのものは決して良かったとは言えないが、前半にライスがプレーしていた位置に入ってビルドアップに関与してくれるだけで大幅に左サイドの機能性が改善された。

 彼が内側に絞ることで、バイエルンの右WGもそこが気になってマルティネッリとのダブルチームが緩くなり、後半のアーセナルはブラジル代表FWと右SBのヨシュア・キミッヒとのマッチアップで優位に立つことができるようになった。

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