選手起用の幅が広がった修正
トゥヘルが好むタイプの選手が徐々に明らかになる中で、“戦術家”で知られるドイツ人指揮官は保持の形を初戦から2戦目にかけて微調整を行った。各試合における修正はサウスゲート体制ではあまり見られなかったが、これによって起用できる選手の幅が広がったように感じる。
その1つが左SBで出場したルイス=スケリーの立ち位置を明確にしたこと。アルバニア戦でのポジショニングはかなり自由で、状況に応じて外のレーンと内のレーンを使い分けていたが、ラトビア戦では常にライスの隣に入る形でビルドアップをサポート。[4-2-3-1(4-1-4-1)]から[3-2-5]に可変する中で「2」の部分に入っていた。
ルイス=スケリーが中盤に入ることの恩恵を受けたのが、2戦目で先発出場したモーガン・ロジャーズである。彼は第1戦もカーティス・ジョーンズに代わって出場していたが、この試合ではダブルボランチの一角での出場となり、慣れていない低い位置でのプレーに苦戦をしていた。
トゥヘルはベリンガムをチームの絶対的な中心に据えており、10番のポジションに固定して起用している。アルバニア戦でボランチ起用となったロジャーズとポジション入れ替えなかったことを踏まえると、誰が相方になってもトップ下から動くことはないだろう。
そういった中で、ロジャーズのプレーエリアを高い位置に上げるための修正は、今後の代表活動におけるヒントとなる可能性が高い。今回はコンディション不良でメンバーから外れたコール・パーマーや、3月の2試合を経て恐らく中盤での起用になることが予想されるフィル・フォーデンもベリンガムと中央で共存することができそうだ。
全代表チームの中で最も選手層が厚いと言っても過言ではないイングランド代表は、来年のW杯に向けて激しいポジション争いが生まれるだろう。ただ、サウスゲート体制のようにネームバリューと代表での経験が重視される形からはトゥヘル体制に代わって変化しており、チームとしての機能性が優先されると感じている。
次にイングランド代表が集まるのは6月の第1週。3月はコンディション不良の影響で招集見送りとなったサカやパーマー、トレント・アレクサンダー=アーノルドらも含めた、サバイバルなポジション争いの激化とトゥヘル体制におけるチームとしての進化に注目だ。
(文:安洋一郎)
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