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Jリーグ 6か月前

酒井高徳が他の日本人と違う「思考態度」。思考態度のエラーこそ、日本サッカーのあらゆる問題の根本的原因【BoS理論(8)】

シリーズ:コラム text by 河岸貴 photo by Getty Images

酒井高徳は何が特別なのか?

 河内一馬氏の『競争闘争理論 サッカーは「競う」べきか「闘う」べきか?』(ソル・メディア)によると、人間(選手)が脳を用いて思考し、身体を用いて実行するまでを3段階に分けています。

 それは、1.思考態度/Mindset(認識→解釈、どのように捉えるか? 前提)→2.思考回路/Thought Process(認知→決断、どのように考えるか? どのように応えるか? 過程)→3.実行となります。
 
 若い頃からドイツで8年間研鑽を積んできた酒井が他の日本人選手と違うのは、2.思考回路ではなく、それ以前の1.思考態度でしょう。できるだけ速く相手ゴールに向かうというサッカーを叩き込まれてきた選手なら、このシチュエーションは躊躇わず前方一択です。これまで何度もそのようにプレーしてきたことで実行部分でもミスがありません。
 
 さらに、『競争闘争理論』を引用するなら、日本サッカーがこれまでアプローチしてきたのは、2.思考回路と3.実行であり、それはモダンサッカー、欧州や南米と同じアプローチです。しかし、初手1.の思考態度が違うなら、2と3は当然エラーを起こします。思考態度のエラーこそ、日本サッカーのあらゆる問題の根本的原因であり、したがって、サッカーの本質的な改善が見込めず、短絡的・断続的な改善に留まっている、といえます。

 
 20年ドイツにいる私の個人的な日本サッカーへの違和感はまさに思考態度の相違にあります。河内氏の言う「サッカーを捉え直す作業」としても、「BoS理論」は役に立つと確信しています。
 
(文:河岸貴)

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【了】

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