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コラム 2か月前

判断の不的確さが日本サッカーを極端に面白くなくしている。縦に速く対ポゼッション。BoS的な意味のあるサポートを考える【BoS理論(9)】

シリーズ:コラム text by 河岸貴 photo by Getty Images

ドイツ人から見た日本サッカー論


「日本でも書けるだろう」と厳しいお言葉がありそうですが、日本では日本での仕事があり……ドイツでの執筆作業はブンデスリーガが身近にある環境のおかげで捗ります。ドイツにいればブンデスリーガだけではなく、地域のリーグも刺激になり、自分自身も老体に鞭打ちながら週3回サッカーをしているので、日々ドイツサッカーのフィールドワークを通じて新たな発見や再認識、そして気づきを収集している感覚です。

 大げさかもしれませんが、私の書く「BoS理論」は、文化人類学的な方法論も加味されていると言えるかもしれません。日本人から見たドイツサッカー論を展開している……その逆で、日本文化を他国の学者が解析した名著として、ルース・ベネディクト著『菊と刀』とオイゲン・ヘリゲル著『弓と禅』が挙げられます。

 これらに関しては賛否両論があります。歴史認識の問題や、ある特定の文化の捉え方などに疑問の余地がある一方で、他方では、日本人の角度から見えずらい、無意識下、潜在的なことを浮き彫りにした多くの指摘は鋭いと言えます。その事実に突きつけられた日本人が「外国人に自国のことを言われたくない」と深い考察もなしに感情的に反発することは想像できます。自国や自分自身に対する日本人のヒステリックなリアクション特性は『菊と刀』をぜひ参考にしてください。

 私が日本サッカーについて述べるとき、それは私の背景からドイツ人から見た日本サッカー論に近いでしょう。このふたりの有名な学者たちのフロンティア精神を畏れ多くも見習い、批判を恐れず日本サッカーについても引き続き副次的に展開していきたいと思います。日本サッカー界に風穴を開けられるのではないかと小さな期待をしています。

 次回からは「攻撃の原則」について述べていこうと思います。「Umschalten」と重複するテーマもあると思いますが、BoS的攻撃の根幹部分にぜひお付き合いください。

(文:河岸貴)

【関連書籍】
『サッカー「BoS理論」 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法』
カンゼン・刊
河岸貴・著
ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法論「BoS(ベーオーエス)理論」(Das Ballorientierte Spiel:ボールにオリエンテーションするプレー)が足りていない日本サッカーの現状に警鐘を鳴らす。ドイツ・ブンデスリーガの名門シュトゥットガルトで指導者、スカウトを歴任した著者が、日本のサッカーの現状を直視しながら、「BoS理論」におけるボール非保持時の部分、「Ballgewinnspiel:ボールを奪うプレー」の道筋をつけた一冊。

【連載はこちらから読めます】
【第1回】ドイツ側の本音、日本人は「Jリーグの映像だけで評価できない」。Jリーグに復帰した選手の違和感の正体
【第2回】「いまは慌てたほうが良い」BoS的攻撃の優先順位を提示する。ドイツの指導者養成資料をもとに攻撃を分解
【第3回】そこに優先順位はあるか? Jリーグの安易なバックパスに疑問。サッカーの「基本的攻撃態度」を突き詰める
【第4回】ボールを奪った瞬間、どう動くべきか。ドイツ2部クラブがレヴァークーゼン相手に見せた効果的な形
【第5回】ボール奪取後のキーワードは「エアスター・ブリック・イン・ディ・ティーフ」。ゴールへ向かう3つの選択肢
【第6回】ドイツサッカー「BoS」の理想と必要悪。ボール奪取直後にリスクを負うべきシチュエーションを解説する
【第7回】どう動くべきだったのか? 町野修斗の受け方は「百害あって一利なし」。お手本は伊藤達哉のプレー
【第8回】酒井高徳が他の日本人と違う「思考態度」。思考態度のエラーこそ、日本サッカーのあらゆる問題の根本的原因


【了】

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