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J3 2か月前

このプレーに一体何の意味があるのか? 自滅するタイプの監督がJリーグには多いような気がする【BoS理論10】

シリーズ:コラム text by 河岸貴 photo by Getty Images

自滅するタイプの監督がJリーグには多いような気がする


 このプレー以外でも、この試合を通じて琉球にはなぜ? と思う危険なパスが見られ、案の定カウンターのピンチに……。琉球はどうやらポゼッションをしたいらしいということがわかりました。

 琉球以外にもポゼッションが目的となって勝ち点が積み重ねられないチームは散見されます。何かしらの戦術(手段)に固執して、毎回同じようなミスをして、改善がされず、同じような失点や負け方をする。こんなようなことで、ヤキモキさせられたことがあるサポーターもいるのではないでしょうか?

 監督の理想や主義・主張とともに選手やサポーターを道連れにすべきではなく、プロである以上は勝利(目的)を目指すべきです。このような、良い意味では信念を貫き通しながら、結局自滅するタイプの監督がJリーグには多いような気がします。

 私の恩人、また指導者としての師匠とも言えるブルーノ・ラッバディア監督との初対面のときの話です。血気盛んで身の程知らずの自信家だった私は、いずれはブンデスリーガの監督になりたいと堂々と宣言しました。

 ブルーノは当時のシュトゥットガルトのスポーツディレクター、フレディ・ボビッチと一緒に微笑し、自身が座っている椅子を揺らし「ブンデスリーガの監督の椅子は非常に不安定だぞ」と言いました。海外クラブのような、3連敗したらクビくらいの感覚の監督業に対して(直近ではレヴァークーゼンのエリック・テン・ハフが2試合で解任)、比較的監督に時間が与えられる寛容なJリーグでは、任期が中長期的である分、その粗が浮き彫りになりやすいかもしれません。

 ドイツの生活が長くなればなるほど、自分と日本で生活する日本人の考え方の違いに気づくことが多くなってきました。もちろんサッカーにおいてもです。スポーツ的側面だけではなく、多角的にドイツサッカーから見える(もしかしたら日本人からも見ても)いくつかの不可解さをテーマに挙げていき、解明したい気持ちがあります。その深掘りは機会を見て考えることにして、新章の「攻撃の原則」について述べていきます。

(文:河岸貴)

【関連書籍】
『サッカー「BoS理論」 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法』
カンゼン・刊
河岸貴・著
ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法論「BoS(ベーオーエス)理論」(Das Ballorientierte Spiel:ボールにオリエンテーションするプレー)が足りていない日本サッカーの現状に警鐘を鳴らす。ドイツ・ブンデスリーガの名門シュトゥットガルトで指導者、スカウトを歴任した著者が、日本のサッカーの現状を直視しながら、「BoS理論」におけるボール非保持時の部分、「Ballgewinnspiel:ボールを奪うプレー」の道筋をつけた一冊。

【連載はこちらから読めます】
【第1回】ドイツ側の本音、日本人は「Jリーグの映像だけで評価できない」。Jリーグに復帰した選手の違和感の正体
【第2回】「いまは慌てたほうが良い」BoS的攻撃の優先順位を提示する。ドイツの指導者養成資料をもとに攻撃を分解
【第3回】そこに優先順位はあるか? Jリーグの安易なバックパスに疑問。サッカーの「基本的攻撃態度」を突き詰める
【第4回】ボールを奪った瞬間、どう動くべきか。ドイツ2部クラブがレヴァークーゼン相手に見せた効果的な形
【第5回】ボール奪取後のキーワードは「エアスター・ブリック・イン・ディ・ティーフ」。ゴールへ向かう3つの選択肢
【第6回】ドイツサッカー「BoS」の理想と必要悪。ボール奪取直後にリスクを負うべきシチュエーションを解説する
【第7回】どう動くべきだったのか? 町野修斗の受け方は「百害あって一利なし」。お手本は伊藤達哉のプレー
【第8回】酒井高徳が他の日本人と違う「思考態度」。思考態度のエラーこそ、日本サッカーのあらゆる問題の根本的原因
【第9回】判断の不的確さが日本サッカーを極端に面白くなくしている。縦に速く対ポゼッション。BoS的な意味のあるサポートを考える


【了】

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