突然訪れた出番
田邉はマリノス戦のプレーを決してポジティブに捉えてはいなかった。それでも、マリノス戦以降は全試合でメンバー入りしている。マリノス戦より前は8試合中1試合しかメンバー入りしていなかったことを考えれば、長谷部監督はマリノス戦のプレーを評価したと言っていい。
そのうち出場したのは1試合のみだったが、練習ではコーチングスタッフと話しながら、背後に送られるボールに対して伸びながらヘディングするプレーに自信を得ていた。
悔しさを日々の努力と成長につなげる。だからAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)と天皇杯のタイトルを逃し、J1リーグでも残り5試合で首位と勝ち点12差の7位と苦しい状況のなか、重要な大会であるルヴァン杯準決勝の舞台で、長谷部監督は田邉を“抜擢“した。
この試合で田邉がプレーした時間は84分間に及んでいる。何も知らなければ先発出場、途中交代したと思うだろうが、そうではない。途中出場でそれだけの時間、プレーしたのだ。
試合開始わずか3分足らずで川崎にアクシデントが発生する。左サイドバックの三浦颯太が自陣で相手をかわしてからパスを送り、オーバーラップしようとした際にランニングフォームを大きく崩して左太もも裏を抑えた。
相手との接触はない。メディカルスタッフが三浦のもとに駆け寄るやいなや、ベンチの長谷部監督は三浦がプレー続行不可能であることを悟った。
長谷部監督が三浦の代わりに選んだのは、そのときまだロッカールームにいた田邉だった。