清水エスパルスの弓場将輝【写真:Getty Images】
清水エスパルス加入2年目の弓場将輝にとって、今季は飛躍の年にしたいという思いが強いのではないだろうか。4月29日に行われたV・ファーレン長崎戦で今季初先発のチャンスを掴んだ。23歳のボランチが初スタメンで確かなインパクトを残すまでの歩みを追った。(取材・文:榊原拓海)[1/2ページ]
明治安田J1百年構想リーグ・地域ラウンド第13節
清水エスパルス 1-2 V・ファーレン長崎
IAIスタジアム日本平
弓場将輝が今季に燃えていたワケ
大分トリニータから清水エスパルスに完全移籍加入した昨季は出場機会が限られていた弓場将輝【写真:Getty Images】
弓場将輝が清水エスパルスに加入してからの歩みは、決して順風満帆ではなかった。昨年の加入時は中盤の即戦力として期待が寄せられたが、開幕直後はメンバーにすら入れないこともあった。
ピッチに立ったときには、球際の強さ、前方向への守備、巧みなポジショニングなど、彼の持ち味を最大限に発揮する試合も少なくはなかったが、最後まで序列を大きく覆すことはできず、最終的にリーグ戦では12試合の出場にとどまった。
弓場は昨季について、「既に基盤が出来上がっているチームに入ってきたこともあって、去年は非常に難しかったです」と振り返る。
だからこそ、弓場は燃えていた。
吉田孝行新監督を迎え、新体制のチームでポジション争いが横一戦のフラットな状態からスタートしたからだ。
「去年とは求められることがまったく異なります。運動量があって、セカンドボールを拾える選手がチョイスされる」とは、始動から1週間足らずで彼が口にしていた言葉だが、その時点で既に、吉田監督が右インサイドハーフ(IH)やボランチの選手に求める役割をきっちりと理解していた。
戦術練習を重ねる中で、「僕からしたら求められていることはすごく明確です」と、定位置争いに自信をのぞかせていたのも印象的だった。
実際、自らの特徴は吉田監督の求める右IH像とマッチしており、鹿児島キャンプの戦術練習では主力組に入る回数も多かった。
今季初の実戦となった1月20日の練習試合・ギラヴァンツ北九州戦では、主力組としておよそ60分間プレー。ポジション争いのライバルとなる宇野禅斗がケガにより出遅れたことで、弓場が確固たる地位を確立する予感もあった。
だが、今季開幕戦の名古屋グランパス戦で、弓場がピッチに立つことはなかった。
心に灯した火を絶やさず、“そのとき”を待ち続ける日々
V・ファーレン長崎戦で今季初先発となった清水エスパルスの弓場将輝(写真の下段右)【写真:Getty Images】
宇野が負傷により戦列を離れた後も、小塚和季の後塵を拝する形になっていた。メンバーから外れる試合は1度たりともなかったが、一方でピッチに立つ機会も少なく、出番を得たとしても、終盤の数分間のみに終始していた。
それでも、弓場は己の心に灯した火を絶やさなかった。最大限の準備をしながら、“そのとき”を待ち続けた。
4月1日に行われた第11節のヴィッセル神戸戦では68分からピッチに立ったが、その当時の弓場にとっては、今季最長の出場時間だった。
チームは狂った歯車を最後まで直せないまま、2-0と完敗を喫したが、弓場個人としては、敵陣でボールを刈り取るプレーや、相手のカウンターを未然に防ぐポジショニングなど、爪痕を残したことも事実。
「常に準備をしてきた自負はありますし、自分の中では全然やれた感触はありました」と口にしたのも頷ける出来だった。
その後の2試合はベンチに座ったまま、試合終了のホイッスルを耳にし、第12節の名古屋戦は3試合ぶりに出番を得たが、後半アディショナルタイムを除くと、わずか7分間のみの出場。
彼自身が歯がゆい思いをしていたことは想像に難くないが、5連戦の2試合目となるV・ファーレン長崎戦で、遂に“そのとき”が訪れた。
「絶対に結果を残す強い気持ちを持って試合に入りました」
V・ファーレン長崎の山口蛍(写真右)と対峙する清水エスパルスの弓場将輝(写真左)【写真:Getty Images】
「正直なところ、試合勘はあまりなかったですが、チャンスを掴めるかどうかは自分次第なので。絶対に結果を残す強い気持ちを持って試合に入りました」
序盤の8分に退場者を出し、開始早々にして予期せぬアクシデントに見舞われたが、「イレギュラーがあった中でも、自分のプレーをすることを意識していました」と冷静だった。
マイボールになった際には、“リンク”できるポジションを取りながらボールを進め、チームが10人となった中でも前線が守備のスイッチを入れた際には、連動して積極的な守備を見せる。堅実なプレーでチームを支えた上で派手に輝いた場面もあった。
21分、弓場は最終ラインのパク・スンウクからボールを呼び込むと、山口蛍が食いついた隙を見逃さず、前を向いて自らボールを持ち運ぶ。オ・セフンにめがけて、アーリークロスを送ると、背番号9のシュートがブロックされたところを嶋本悠大が押し込み、10人の清水が先制ゴールを奪った。
元々は右利きとしてプレーしていたこともあり、逆足でのプレーにも「特に苦手意識はない」という言葉に嘘偽りはない。実際、アーリークロスはお見事だったが、やはりポイントになったのは中盤で山口を出し抜き、前を向いたシーンだろう。
普段からよく相手を観察しているという、弓場のらしさが詰まったワンプレーだ。