フットボールチャンネル

J1 3時間前

鈴木優磨も認める“ギラつく目”。鹿島アントラーズ、吉田湊海が挑む強力攻撃陣との競争。「自分はゴールを取るのが武器」【コラム】

鹿島アントラーズ、吉田湊海
鹿島アントラーズの吉田湊海【写真:Getty Images】



 鹿島アントラーズユースでゴールを量産する17歳FW吉田湊海が、ついに今季初めてトップチームでベンチ入りを果たした。プレミアリーグ得点ランキング首位を走るストライカーは、ユースの試合ではなく、横浜F・マリノス戦が行われる日産スタジアムへ向かっていた。鬼木達監督から「点を取って来い」と送り出された高校3年生は、憧れの鈴木優磨と同じピッチに立ちながら、自らの未来を切り開こうとしている。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]

「優磨くんやレオのように…」

鹿島アントラーズの鈴木優磨とレオ・セアラ
鹿島アントラーズの鈴木優磨とレオ・セアラ【写真:Getty Images】

「攻撃の部分で自分はゴールを取るのが武器だと思っています。そこをもっと磨きつつ、(鈴木)優磨くんやレオ(・セアラ)のようにチームのために常に頑張って、走って、守備もできる選手になりたい」

 ユースの大黒柱として量産してきたゴールと、トップチームでトレーニングに臨んできた意識の高さとが認められて勝ち取ったプロとしての初陣。投入された直後の81分に吉田は魅せている。

 吉田の投入とともにそれまでの左サイドハーフから、左サイドバックへポジションを一列下げた明治大学卒のルーキー、林晴己が内側へやや切れ込んでから右足で浮き球の縦パスを放った。

 キックオフ直後からハイラインを敷いてきた、マリノスの最終ラインの裏を狙ったパスに巧みに反応したのは吉田。しかもトップチームでは「30」を背負う17歳は、ただ単に抜け出しただけではなかった。



 それまでマリノスのセンターバック(CB)、ジェイソン・キニョーネスの背後で気配を消していた吉田は、虚を突く形でコロンビア出身の屈強なCBの前方に現れてペナルティーエリア(PA)内でボールを収めた。

 キニョーネスの前方にいたマリノスのもう一人のCB、井上太聖の反応も完全に遅れる。

 相手PA内で生まれかけたチャンスは、必死に対応したキニョーネスが何とか左コーナーキック(CK)に逃れ、MF荒木遼太郎が放ったCKもゴールには結びつかなかった。

 しかし、17歳のアタッカーが見せた気迫と裏へのチャレンジが、前半はシュート1本、それもゴールの枠を外れるなど、まったく攻撃の形を作れなかった鹿島の先輩選手たちを奮い立たせた。

 たとえば鈴木は試合後に「アイツは若いですけど、頭がいいですよ」と吉田を称賛している。

「目がいいですよね」

鹿島アントラーズ、鈴木優磨
鹿島アントラーズの鈴木優磨【写真:Getty Images】

「途中から出場したなかで、どこへ走ったら相手が嫌がるのかをちゃんとわかっているし、こういうプレーをしてほしいと(味方に要求する)動きもしていた。賢いですよね。一番は賢さだと思います」

 くしくも鹿島がマリノスを破り、9シーズンぶり9度目のリーグ優勝を勝ち取った昨シーズンの最終節後。鈴木はようやく手にしたタイトルに感無量の表情を浮かべながらも、こんな言葉とともに目を細めていた。

「いまはアカデミーがいい循環を見せているので、本当に楽しみにしています」



 視線を向けたのは、18歳以下のユースチームが臨む全国規模の大会でクラブ史上初の年間三冠を達成した鹿島ユースの後輩たちであり、まもなくプロ契約を結ぼうとしていた吉田と元砂だった。

 あれから5カ月あまり。ひと回り以上も年齢が離れていても、同じプロの土俵に立てば、自身を尊敬していると公言してきた可愛い後輩は挑戦者の一人となる。鈴木はうれしそうにこう語ってもいる。

「目がいいですよね。ギラついている目が。自分も本当にウカウカしていられないと思いました」

「トップチームで点を取るのが夢」

鹿島アントラーズ
PK戦の末勝利した鹿島アントラーズ【写真:Getty Images】

 試合は0-1のまま、6分台が提示された後半アディショナルタイム4分に鈴木の浮き球のパスにFWチャブリッチがPAの右外側で反応。DF加藤蓮のファウルを獲得して大きく動いた。

 キッカーの荒木が放った低い弾道の直接フリーキック(FK)に、やや遅れて飛び込んできたレオ・セアラが巧みに頭をヒットさせ、軌道を変えたボールをゴール左隅へ流し込んで土壇場で同点に追いついた。

 そのまま突入したPK戦は先蹴りのマリノスの3番手、DF宮市亮がゴール左を狙ったキックを、FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会に臨む森保ジャパン入りが確実視される守護神・早川友基が完璧にキャッチした。

 対する鹿島は5人全員が成功。3連勝でEASTグループの首位通過へ残り2試合で王手をかけた。



「点を決めたかったんですけど、レオが決めて、チームもPK戦で勝てたのでよかったです」

 同点とした場面ではニアで潰れ役となり、鹿島を救ったレオ・セアラの背後から真っ先に抱き着いて喜びを共有した吉田は、フィールドプレイヤーの最後で見守ったPK戦をへて思いを新たにしている。

「トップチームで点を取るのが夢であり、目標でもあるので、1点でも多く取れるように頑張りたい」

 昨シーズンの戴冠に続いて、秋春制の新シーズンへ移行する百年構想リーグでも頂点に近づきつつある鹿島のなかで、既存の選手たちを下から強烈に突きあげる次世代があげる咆哮も確実に大きくなっている。

(取材・文:藤江直人)

【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

【関連記事】
「文句ひとつ言わずに…」鹿島アントラーズ、柴崎岳が示す「他の選手も見習うべき」姿。限られた時間にすべて懸ける【コラム】
「オニさんが来て本当に変わりました」鹿島アントラーズ、田川亨介がエゴを捨てた一瞬の決断。「たとえ先発じゃなくても…」【コラム】
三竿健斗に派手さはない。だから頭を使ってきた。その経験が今の鹿島アントラーズを強くさせた。「自分は30代から輝く」【コラム】

【了】
1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!