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「普通じゃありえない」ベガルタ仙台、林彰洋がW杯日本代表の“ある選手”に伝えた言葉。その刺激を力に「終わったときに…」【コラム】

林彰洋 ベガルタ仙台
ベガルタ仙台でプレーする林彰洋【写真:Getty Images】



 ベガルタ仙台を17年ぶりのタイトルへ導いた39歳の守護神・林彰洋。その視線は優勝の喜びよりも、次なるJ1昇格へ向いていた。そんなベテランがFIFAワールドカップ2026(北中米W杯)に挑むある選手へ送った言葉には、自らも成長を追い求め続ける覚悟がにじんでいた。PK戦の舞台裏とともに、その胸中に迫る。(取材・文:藤江直人)[2/2ページ]

「これじゃあ上がれない、まだまだ甘い」

ベガルタ仙台
百年構想リーグを戦い抜いたベガルタ仙台【写真:Getty Images】


「一瞬の喜びというか、今日は喜んでもいいのかなと思います。ただ、このチームが一番の目標として掲げるJ1への昇格を考えたら、これじゃあ上がれない、まだまだ甘いと思わされた最後の数試合でした。

 実際に最終節では横浜FCに負けていますし、今日も富山のほうがいいサッカーをしていた。相手が11人だったら、と考えればラッキーだった部分もある。これをいい薬にしないといけない」

 1位通過をすでに決めていた地域リーグラウンドEAST-Aグループの最終節では、昨シーズンをJ1で戦った横浜FCに0-3と完敗した。PK戦での劇的な勝利は、リーグ戦では引き分けとなる。

 秋春制へのシーズン移行のもと8月に開幕する2026/27シーズンで、2021年を最後に遠ざかっているJ1への復帰を至上命題に掲げる。だからこそ仙台の17年ぶりのタイトル獲得も通過点となる。

 そして新しいシーズンが終盤戦を迎える来年5月に、林は40回目の誕生日を迎える。

「いまでも40歳になったらどうなっているか、などとは考えていないというか。いま置かれている状況からして、本当に1カ月後、半年後を想像しながら僕は進んでいるわけではないんですよ。

 何なら僕は目先の1日、あるいは1週間というところにフォーカスしてきました。ベテランである以上は、そこまで長いスパンで見るものではないのかなと個人的には思っているので」

 ある意味で背水の陣を敷き続けているのか。こう問われた林は「そうですね」と首を縦に振る。

W杯に挑む日本代表選手に伝えた言葉

サッカー日本代表
北中米W杯に臨むサッカー日本代表【写真:Getty Images】


「自分も大きな怪我もしました。怪我との戦いもそうですし、パフォーマンスを落とさないところも…落とさないというよりも、どちらかと言えばこの状況でどれだけ成長できるのか、だと思っているので。

 プロである以上は成長して『こいつは使える』や『こいつを使いたい』と思わせるのも大事ですし、そのなかで勝利できるように。まだまだ完成していないと思うので、貪欲に、ひたむきにやっていきたい」

 FIFAワールドカップ2026(W杯北中米大会)に臨む日本代表メンバー26人が発表されてから、一夜明けた5月16日だったと記憶している。林は代表に名を連ねた一人に電話を入れている。

 祝福の言葉だけではない。林は「本当に誇りに思います」と日本人を含めたアジア系選手で史上初めて5大会連続でワールドカップ代表入りを果たした、ひとつ年上の長友佑都へ思いの丈を告げた。

 FC東京時代に共闘しただけではない。長友が明治大学、自身が流通経済大学だった2000年代後半の大学選抜や林自身はバックアップだった北京五輪代表チーム、その後の日本代表でも同じ時間を共有した。

「心から誇りに思えたので連絡しました。どのような形であれ、5大会連続でワールドカップ代表に選ばれるのは普通じゃありえない。歴代の監督が彼を入れたい、という思い以外の何物でもないですよね」

 スマートフォン越しに「ありがとう」と返してきた長友から、いまも刺激を受けていると林は笑う。

「いまの日本代表でも…」

アイスランド代表戦の長友佑都
サッカー日本代表の最年長プレーヤー・長友佑都【写真:Getty Images】


「メンタル的に非常に強いというか、劣勢に立たされてもくじける姿はなかなか見せない。プロの集団なので個々がメンタルを保ちますけど、雰囲気のもっていき方とか、そういうところが本当にすごい。

 いまの日本代表でもうまくいかなかったら絶対に批判の的にされる選手が出てくる。そこで彼のようなメンタル強者がいてくれれば。チームを保てるのはそういう選手の存在によるのかなと個人的には思います」

 百年構想リーグを戦いながら若手が次々と台頭した仙台でも、林が最後尾で重厚な存在感を放った。

「支えられるときもありましたし、これからも常に支えるような準備をして臨みたい。まずは39歳で迎えるシーズンなので、チームとして登っていけるように、終わったときにサンキューと言えるように」

 代表を含めて自身とは異なるカテゴリーで、常に全身全霊で戦う盟友の背中は進むべき羅針盤になる。

 年齢の「39」を「サンキュー」と引っかけて笑いながら、林は貪欲に成長を追い求めていく。

(取材・文:藤江直人)

【著者プロフィール:藤江直人】
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後の1989年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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