「FWなら、得点王を目指さないでプレーする方がおかしい」。FIFAワールドカップ2026に臨む日本代表メンバーに選出された塩貝健人は、そう言い切った。大学を中退して渡欧し、途中出場で結果を積み重ねてきた21歳には、自らの武器と役割への確かな自信がある。なぜ、そこまで大きな目標を口にできるのか。次代のエース候補が、自らの現在地とW杯で着用するギアへのこだわりを語った。(取材・文:高橋大地)[1/2ページ]
「現実的かどうかよりも、そこを目指さない理由がない」
6月12日、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)が開幕した。日本代表は15日にオランダ代表との初戦を迎える。
ちょうど1ヶ月前となる5月15日、W杯本大会に臨む日本代表メンバーが発表された。三笘薫や南野拓実ら主力不在のなか、新たな風として選ばれた若きストライカーがいる。
塩貝健人だ。
慶応大を中退し、単身オランダ、そしてドイツへ渡ってアピールを続けたストライカーは、激しい競争となった日本代表メンバー選考の中で、生き残った。
「限られた枠だし、多くのサッカー選手がその舞台を目指して日々を過ごしてきたと思います。その中で、行ける選手、行けない選手がいるので、そういった選手たちの分も、選ばれたからにはしっかり結果で示したいです」
今年3月に21歳になったばかりの塩貝だが、浮足立った様子は一切ない。
「この1シーズンを見ただけでも、かなり成長しているなという印象がある。成長曲線を見た時に、このW杯を経験する中で、期間中もさらに成長してチームの力になってもらえるのではないかと。今と未来への期待も込めて選んだ」
これは、塩貝と最年少で選ばれた後藤啓介2人に対する森保一監督のコメントだが、塩貝自身は「自分の仕事はストライカーとして結果を出すこと」と、招集された理由を解釈している。
そんな塩貝は、W杯での具体的な個人目標を「得点王」と公言している。
「現実的な目標かと聞かれれば…」
「自分がワールドカップの得点王になって、チームを勝たせられればと思っています。僕はストライカーなので、一番点を取るのは当たり前のこと」
ファンにとっては、大きすぎる目標に聞こえたかもしれない。『ビッグマウス』や『世間知らず』といった厳しい声もあっただろう。
しかし、塩貝が加わった日本代表の目標はあくまで『W杯優勝』だ。
「チームとしては優勝、間違いなくそれがみんなの目標です。ただ、チームが優勝するためには、得点が必要」
実際に、ロナウド(ブラジル)やミロスラフ・クローゼ(ドイツ)、キリアン・エンバペ(フランス)ら、歴代のワールドカップ得点王の多くは、優勝やベスト4進出を果たしたチームのストライカーたちだった。
「現実的な目標かと聞かれれば、難しい目標です。簡単ではありません。でも、FWであれば、最初から得点王を目指さないでプレーする方がおかしいと思うので。(アーリング・)ハーランドや、エンバペだったり、すごいストライカーばかりですけど、そこに負けていたら優勝はできませんし、得点なしで勝ち上がるのは難しいと思っています。だから、現実的かどうかよりも、そこを目指さない理由がないんです」
チームがW杯優勝を掲げる以上、FWである自分が得点王を目指す。塩貝の中では、それが自然な発想だった。
ただ、日本代表に滑り込んだ塩貝に与えられる出場時間は現時点で不透明だ。
しかし、塩貝にはNECナイメヘン時代に自ら築いた実績がある。データサイト『Opta』によると、2025年1月から1年間、塩貝がエールディヴィジで記録した『途中出場からの11得点』は、途中出場選手におけるリーグ史上最多の得点数だった。
限られた出場時間のなかでも結果を残せる選手は、ワールドカップのような短期決戦で、チームにとって大きな武器になる。
「負けている状況だったり、あと1点が欲しいタイミングで出場することが多かったですし、そこで結果を出してきた自信はあります。そういった場面で活躍できるのも自分の強みだと思っています」
塩貝は続ける。
「動き続けることが大事」
「途中出場に限らず、ワールドカップでは絶対に自分の力が必要になる場面が来ると思っています。代表ではまだ実績もないですし、出番がどうなるか分かりません。ただ、(チームとして)絶対に1点が欲しい場面は来ると思うので、その時に、自分がやれるというところをワールドカップの舞台で見せたいです」
強気な言葉の裏には、欧州でも通用した確かな武器がある。最高時速36.2キロを記録したスピードと馬力、そしてオフ・ザ・ボールの動き出しだ。特に動き出しついては「感覚的な部分も多いですけど」と話す一方で、こだわっていることもある。
「いろいろ試していく中で、『こうして動いたほうがいい』とかは、練習や試合を通して常に考えています。
得点を決めたシーンは、間違いなくいい動き出しができたからだと思うので、それを言語化できるように、後で動画を見て復習しています。
(FWは)動きを止めないこと、動き続けることが大事だと思っています」
自分のプレーを言語化し、再現性へ落とし込もうとする姿勢にも、塩貝らしさが表れていた。
「動き続ける」塩貝が、“らしさを支える相棒”として愛用しているのが、アディダスの『F50』シリーズだ。
「走力や力強さを武器にする自分のプレースタイルに合っているんです」
スピードを武器とするプレーヤー向けに設計されたF50は、塩貝にとって単なるスパイクではない。
「ワールドカップで勝つためには、世界の選手に負けない走力や力強さが必要になってくる。F50を履けば、一瞬の蹴り出しや加速までの速さ、ふんばりが効くので、それを最大限に生かせると思っています」
今回のW杯で塩貝が着用するのは、かかと部分にW杯トロフィーがデザインされた限定モデルだ。
「これを履いて点を取れたら、一生価値のあるものになる。日本でも履ける選手は数人しかいないと思うので、誇らしさもあります」
W杯限定モデルのスパイクを履き、その舞台でゴールを決める姿を、本気で思い描いている。
塩貝の言葉に説得力があるのは、その野心が“夢物語”ではなく、これまで積み重ねてきた努力や決断の延長線上にあるからだ。



