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元Jリーガーが分析。オランダ代表目線の「日本代表戦のリアル」とは。クーマンは何を失敗したのか【田中裕介のMatch dive】

シリーズ:田中裕介のMatch dive text by 田中裕介 photo by Getty Images, Shinya Tanaka
オランダ代表
北中米W杯を戦うオランダ代表【写真:Getty Images】



 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)・グループFの開幕戦。欧州の雄・オランダ代表にとって、この日本戦はまさに「前半の停滞、後半のギアチェンジ、徹底された個の力、そして最終盤の大きな誤算」が凝縮された、極めてスリリングな90分間となった。今回は、オランダ代表がピッチ上で何を狙い、日本のシステム「5-4-1」にいかに手を焼き、勝ち点3を奪えなかったのか。彼らの視点に立って、この一戦の戦術的攻防をMatch dive(深層分析)していきたい。(文:田中裕介)[1/2ページ]

クーマン監督が敷いた「4-3-3」の戦闘配置

オランダ代表監督ロナルド・クーマン監督
オランダ代表監督ロナルド・クーマン監督【写真:Getty Images】


 オランダを率いるロナルド・クーマン監督は、初戦のピッチに最高峰のタレントを並べてきた。

 直前の負傷で状態が懸念されたGKバルト・フェルブルッヘンをスタートから起用できたことは、チームにとって最初の好材料だったと言える。

 選択したシステムは伝統の「4-3-3」。バックラインは左からミッキー・ファン・デ・フェン、フィルジル・ファン・ダイク、ヤン・ポール・ファン・ヘッケ、デンゼル・ダンフリース。中盤の底にフレンキー・デ・ヨングを配し、ライアン・フラーフェンベルフとタイアニ・ラインデルスがインサイド気味に絡む。

 前線にはコーディ・ガクポ、ドニエル・マレン、クリセンシオ・サマーフィルという、圧倒的な個の推進力を誇る3枚を揃えた。

【前半】日本の完璧な対応とオランダ両SBの「キャラクターの限界」

谷口彰悟
DFリーダーとして体を張った谷口彰悟【写真:Getty Images】


 立ち上がり、オランダは理想的な形でゲームに入る。前半早々、高い位置で左WGのガクポが起点を作ると、中央のトップに入ったマレンへ斜めのパスをペナルティーエリア(PA)へ供給する。

 マレンは日本のCB谷口彰悟を背負いながらも、強靭なフィジカルを活かして瞬時に反転しシュートを放つ。オランダにとっては「狙い通りに個の質で剥がした」最初の決定機だった。

 しかし、ここからオランダは、日本が施してきた極めてオーソドックスかつ忍耐強い「5-4-1」の可変ローブロックに完全に手詰まりとなっていく。

 オランダの心臓であるアンカーのデ・ヨングに対し、日本の前線(上田綺世、久保建英、前田大然)が徹底的な監視の目を光らせてきたからだ。中央のルートを遮断されたオランダは、ファン・ダイクとファン・ヘッケの2CBにボールを持たされる状況が続く。

 さらに、オランダの最大のストロングポイントである「サイドアタック」が機能不全に陥る。

 左WGのガクポがボールを持てば、日本の右WB堂安律だけでなく、右シャドーの久保までもがプレスバックで戻ってきて2枚、3枚の壁を築く。オランダの「個の質」に対し、日本は徹底した「守備の量」でスペースを完全に消し去っていた。

サイドバック田中裕介の眼:浮き彫りになった連係面の弱点

中村敬斗
1点目をあげながら守備でも大きく貢献した中村敬斗【写真:田中伸弥】


 前半のハイドレーションブレイクを経て、オランダはより全体の重心を高く設定し、2次攻撃を仕掛けるハーフコートゲームを展開した。

 しかし、誤算だったのは日本の両WB(堂安、中村敬斗)の驚異的な守備の集中力だ。

 外側に張るオランダの両WGガクポとサマーフィルにマンツーマン気味にタイトに付かれたことで、オランダの両SB(ファン・デ・フェン、ダンフリース)は外側のレーンでスペースを使うことに苦労し、前半は攻撃に関与する機会を完全に奪われてしまった。

 ここでオランダの致命的な弱点となったのが、ファン・デ・フェンとダンフリースという両SBの「キャラクターの特徴」だ。2人とも圧倒的なスピードを誇り、広大なスペースを縦にダイナミックに駆け上がるプレーにこそ最大の強みがあるDFである。

 裏を返せば、日本のようにスペースを消してガチガチにブロックを敷いてきた相手に対し、インサイド(内側のレーン)に入り込んで受け手となり、細かいパス交換からクロスやスルーパスといったプレー、アンダーラップを仕掛けてウイング(ガクポ、サマーフィル)と連係・連動するような器用さは持ち合わせていない。

 外側のレーンを日本に封鎖されたとき、内側を突くダイナミックな位置の変更や連係の引き出しがチームとして用意されていなかったため、彼らの武器であるスピードは完全に宝の持ち腐れとなってしまった。

 ボールを握りながらも一瞬の隙を突かれ、日本のボランチ・鎌田大地からのスルーパスから上田に決定機を作られるなど、オランダにとっては見事に対応され、不気味な怖さを感じながら進める前半となった。

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