
サッカー日本代表【写真:Getty Images】
北中米ワールドカップグループリーグ初戦のスウェーデン戦に敗れ監督が電撃後退したチュニジア代表。近年は深刻な得点力不足にも悩まされており、攻撃面には明確な課題を抱えている。日本代表はどこで優位性を発揮できるのか。日本と各国との相性を盤面の攻防から診断し、日本代表の勝ち筋を探った西部謙司氏の新著『サッカー日本代表 マッチングレポート』より、グループリーグ2戦目のチュニジア戦を占った章を一部抜粋で公開する。後編(文:西部謙司 )
日本のボール保持対チュニジアのローブロック
アフリカ・ネーションズカップに敗退すると、即座にサミ・トラベルシ監督以下スタッフを解任した。
大会直後、メイブリは「我々は学ばなければいけない」と話していた。
戦術的に時代遅れだという意味の発言もあった。そこの改善ができるかどうかが焦点だろう。
[4―1―4―1]のミドルブロック守備が基本だが、そこからハイプレスに移行する機能がない。
左IHのメイブリが相手のCBに対してプレスしても、周囲が連動していなかった。ディフェンスラインの押し上げもない。
そうするとメイブリだけが動くのは逆効果になってしまう。
プレミアリーグでプレーしているメイブリとすれば、ハイプレスに移行すべき状況なのだが、周囲がそうとは認識していなかった。
おそらくこのあたりが問題だとメイブリは指摘していたのだと思う。
新体制で、そうした戦術的な不備がどれくらい修正されるのかは何ともいえないが、少なくともアフリカ・ネーションズカップのような状態では日本に太刀打ちできないだろう。
チュニジアとしてはミドルゾーンで奪ってハーフカウンターを繰り出したいところだけれども、日本からボールを奪うのは難しい。
結局のところ、ローブロックに下げられての防戦という展開になると予想される。
2022年のキリンカップで日本はチュニジアに0対3の完敗を喫した苦い記憶がある。
ボールを保持するもののチュニジアの堅陣をなかなか崩せなかった。何度か決定機はつくったものの決め切れず。
伊東純也と三笘薫の個人技頼みで攻め手が限られていて、そこはチュニジアに警戒されていた。
失点に関してはCB吉田麻也の裏を狙われている。
1点目は吉田のファウルによるPK、2点目も処理ミスから。3点目はカウンターをガンバ大阪にいるイッサム・ジェバリに決められた。
当時の日本は現在ほどハイプレスに威力がなく、押し込んでいながらプレスをかいくぐられてカウンターされている。
この点については4年間でかなり改善されているので心配はしていない。
チュニジアに反撃の機会を与えることはそれほどなく、逆に高い位置で奪ってチャンスをつくることができるはずだ。
ただ、相手にローブロックで守備を固められると攻撃が停滞する日本の弱点は4年間でさほど改善されていない。
2022年のチュニジア戦は、いわばカタール大会で唯一敗れたコスタリカ戦を予言するものだった。
26年大会予選でも日本が3ポイントを取れなかった3試合(オーストラリア戦2試合とホームのサウジアラビア戦)はすべて相手に引かれた試合である。
ゴール前に「バス」を置かれるような状態にされて得点しにくいのは日本だけではなく強豪国でもそうなる。
そこで重要なのは、相手に反撃の機会を与えないことだ。
保持して押し込む日本は相対的に有利な立場になる。
なかなか得点が取れない、チャンスをつくれないことでフラストレーションは溜まるかもしれないが、それでもチャンスの数は相手を上回る。
決定機が皆無ということもないだろう。そして1点取ってしまえば試合は決まる。
相手陣内でボールを奪った瞬間、相手は守備の準備が整っていない。
守備では相手をマークするが、攻撃では相手から離れるポジションを取るからだ。
相手陣内でボールを奪えば、整っていない守備に対しての攻撃になるので効果が大きい。
つまり、守備を固める相手をどう崩すかも大事だが、それ以上に即時奪回からのショートカウンターで十分得点は見込めるので、そうした構造をつくってしまえば日本の優位は動かない。
ハイプレスが機能していれば、攻め手の少なさはさほど問題ではなく、多彩な攻め込みでローブロックを崩せればベターだが、それよりも重要なのは敵陣守備の威力である。
日本のハイプレスが外されてカウンターされる状況も数回はあるだろうが、そこで仕留める力が今回のチュニジアには不足している。
特別に速いアタッカーがおらず、カウンターで得点するよりも、カウンターの失敗から日本に逆襲される可能性のほうが高いだろう。
日本が保持して押し込み、ハイプレスでチュニジアの反撃を寸断する。この構図がどの程度の時間続くか。
チュニジアが先制しても試合の構図は変わらない。日本が先制して、初めて変わる可能性が出てくる。
(文:西部謙司)
【著者プロフィール:西部謙司】
1962年9月27日生まれ、東京都出身。現在は千葉市に住み、ジェフユナイテッド千葉のファンを自認し、タグマ版『犬の生活SUPER』を連載中。『フットボリスタ』(ソル・メディア)などにコラムを執筆中。著書に『戦術クロニクル』シリーズ(小社)、『フットボールクラブ哲学図鑑』(同)、『フットボール代表プレースタイル図鑑』(同)、『戦術リストランテ』シリーズ(ソル・メディア)、『教養としてのサッカーと戦術』(エクスナレッジ)など。
<書籍概要>

『サッカー日本代表 マッチングレポート』
西部謙司 著
定価1,980円(本体1,800円+税)
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【了】
