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バイエルンより力が劣る。ドイツ代表は衰退していく強豪国の流れに逆らうことができるのか?【北中米W杯注目国分析】

シリーズ:北中米W杯注目国分析 text by 西部謙司 photo by Getty Images

ドイツ代表
ドイツ代表【写真:Getty Images】



 FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)が幕を開けた。日本代表はもちろんのこと、いわゆる強豪国と称されるチームのパフォーマンスにも期待が集まる。そこで今回は、各国のサッカーの歴史や戦術に詳しい西部謙司氏に、北中米W杯における注目国について分析してもらった。ドイツ代表編をお届けする。(文:西部謙司)

衰退していくW杯強豪国


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ドイツ代表
ワールドカップで通算4回の優勝を誇るドイツ代表【写真:Getty Images】



 FIFAワールドカップ(W杯)第1回大会の優勝は開催国ウルグアイ。ウルグアイが不参加だった次の2大会はイタリアが連覇した。

 戦後に再開した第4回大会は開催国ブラジルが優勝候補筆頭だったが、ウルグアイが2回目の優勝。ブラジルにとっては「マラカナの悲劇」として知られるトラウマ的敗戦だった。

 ウルグアイは54年大会で4位、70年大会も4位。次の4位は40年後の2010年、もうこの時のウルグアイは強豪というより「かつての強豪」だった。コパ・アメリカでは好成績を残していたものの、もはやW杯の強豪ではなかった。

 二番目の優勝国だったイタリアは通算4回の優勝。初期の連覇の後は1982年、2006年に優勝している。調子の波はあったが、ここまでは紛れもない強豪だった。

 ところが、次の10年大会、14年大会とグループステージ敗退。その後の3大会は予選落ちで本大会出場もできていないという急降下を見せた。

 21年の欧州選手権(EURO)に優勝して復活するかと思われたが、そのまま低迷してしまっている。今やイタリアも強豪国とは言えなくなった。

 三番目の優勝国はドイツ(西ドイツ)である。

 54年大会決勝で圧倒的な優勝候補だったハンガリーに逆転で勝利。「ベルンの奇跡」と称賛された。

 その後も自国開催の74年、90年、2014年と通算4回の世界一。その間に準優勝4回、3位3回、4位1回と抜群の戦績を誇った。元イングランド代表のガリー・リネカーによる「最後はドイツが勝つ」という言葉どおりだった。

次第にバイエルンの選手たちが中心に

ドイツ代表
ドイツ代表の中心選手は次第にバイエルン勢となった【写真:Getty Images】



 しかし、14年の優勝後は2大会連続のグループステージ敗退。これはイタリアの辿った道と重なる。

 四番目の優勝国であるブラジルはまだグループステージ敗退がない。ただし、かつての威光はすでに失いつつある。

 強豪ドミノはまだドイツに達するかどうかという状況だが、ドイツが倒れれば一気にブラジルまで波及しそうにも見える。

 ちなみに五番目のイングランドは66年優勝後まもなく低迷期に入ったが復活した。六番目のアルゼンチン以下、フランス、スペインは現在も強豪である。

 強豪が順番に古豪となっていく現象は偶然なのか、それとも何らかの理由があるのだろうか。

 54年初優勝の中心はカイザースラウテルンの選手たちだった。だが、70年代からはバイエルン・ミュンヘンがその座を引き継ぐ。

 74年優勝メンバーにはGKゼップ・マイヤー、DFフランツ・ベッケンバウアー、ゲオルク・シュバルツェンベック、パウル・ブライトナー、MFウリ・ヘーネス、FWゲルト・ミュラーの6人のバイエルン所属選手がいた。

 90年の優勝メンバーにもバイエルン勢は6人。さらに14年優勝時には7人を数えている。

 GKマヌエル・ノイアー、DFフィリップ・ラーム、ジェローム・ボアテング、MFバスティアン・シュバインシュタイガー、トニー・クロース、トーマス・ミュラーがレギュラーを務め、決勝ゴールを決めたマリオ・ゲッツェもいた。

 戦術的にも、14年のドイツ代表は単独クラブチームに近い完成度を誇っていた。1つ、ないし2つのクラブを中心に代表チームを編成するのは珍しいことではない。ハンガリー、ソ連、オランダ、イタリアなどにも同様の事例があった。

 しかし、選手の国外移籍が活発化すると、その形は維持できなくなった。

 そんな中でも、バイエルンとバルセロナだけは例外的な存在として残り、2010年と14年の世界王者を支えたのである。

ドイツ代表よりバイエルンの方が強い

FWハリー・ケイン
現在のドイツ代表を支えるのはケインら外国籍の選手たちだ【写真:Getty Images】



「毎日トレーニングしている代表チームがある」

 ウルグアイの名将オスカー・ワシントン・タバレスが指摘した「毎日練習している代表」はコロンビアのことで、1980年代末のコロンビアはほぼナシオナル・メデジンだった。ドイツ代表とバイエルンの関係も同じようなものだろう。

 代表チームは活動日数が限られている。だからこそ、クラブチームで培った戦術や連係をそのまま持ち込めるメリットは大きい。

 バイエルンが代表の基盤であり続けたことこそ、ドイツの安定した強さを支えた最大の要因だった。

 もっとも、現在のドイツ代表は往年の姿とは少し異なる。現在のバイエルンにもドイツ代表選手は6人いる。

 しかし、チームの攻撃を支えているのはマイケル・オリーセ、ハリー・ケイン、ルイス・ディアスといった外国籍選手たちだ。

 ドイツ代表の基盤がバイエルンなのは変わらない。ただし、そのバイエルンの最も強力な部分が代表には存在しない。

 まとまりはあっても、かつてのような「バイエルン+α」ではなく、「バイエルン-主力外国籍選手」のチームと言える。

 そこが14年優勝時との決定的な違いだろう。

 キュラソー、コートジボワール、エクアドルのグループであれば、グループステージ突破の可能性は高い。ただ、その先はどうだろうか。

 バイエルンの存在は、強豪ドミノを食い止めるだけの力をまだ持っているのか。

 ドイツ代表は依然として有力国の一角ではある。しかし、かつてのように「最後はドイツが勝つ」と言い切れるほどの存在ではなくなった。

 強豪国が次々と歴史の表舞台から退いていく中、ドイツはその流れに抗うことができるのか。

 北中米W杯は、その現在地を測る大会になりそうだ。

(文:西部謙司)

【著者プロフィール:西部謙司】
1962年9月27日生まれ、東京都出身。学研『ストライカー』の編集記者を経て、02年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、ヨーロッパサッカーを中心に取材。現在は千葉市に住み、ジェフ千葉のファンを自認し、WEBスポーツナビゲションでは「犬の生活」を連載中。サッカーダイジェスト、フットボリスタなどにコラムを執筆中。『ちょいテク 超一流プレーヤーから学ぶちょっとスペシャルなワザ』監修(カンゼン)、「サッカー右翼サッカー左翼」(カンゼン)、近著に『戦術リストランテⅣ』(ソル・メディア)、「ゴールへのルート」(Gakken) 、共著の『サッカー日本代表の戦術が誰でも簡単に分かるようになる本』(マイナビ)、『FCバルセロナ』(ちくま新書)がある。

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