
チュニジア戦に臨む日本代表【写真:田中伸弥】
日本代表はチュニジア代表に4-0と快勝したが、素直には喜べない。戦い方がひとつしかない相手に「実力差通り」勝っただけであり、日本のプレーにプラス要素はさほど見られなかった。むしろ心配なのは、この圧勝ぶりが過大評価を生むことと、遠藤航不在の中で佐野海舟が2試合フル出場を続けていること。本当の意味での真価が問われるのは、ここからだ。(文:西部謙司)[1/2ページ]
残酷なほどの完勝
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日本代表を率いる森保一監督【写真:田中伸弥】
余裕の4-0、完勝だった。残酷なほどの実力差である。
48チームに膨張した今回のW杯だが、弱小とみられていたチームの意外な健闘も光っている。カーボベルデがスペインと0-0、コンゴ民主共和国もポルトガルと引き分けた。
コンゴ民主共和国は1974年大会に「ザイール」として1枠しかなかったCAFの代表として出場したが、3戦全敗の得失点差マイナス14点という惨憺たる結果だった。ユーゴスラビアには0-9で大敗を喫し、3試合の得点はゼロ。残酷なほどの実力差だった。
今回は出場国が16チームも増えたが、キュラソーがドイツに1-7で敗れたほかはそこまで大きな差は生じていない。しかし、キュラソーの6点差負けの次がチュニジアの4点差負けである。スウェーデンに1-5と初戦を失っていた。
アフリカネイションズカップ後に就任したサブリ・ラムシ監督が解任され、エルヴェ・ルナール監督に代わった。W杯アジア予選でサウジアラビアを率いていたので、日本については熟知している。ただ、いきなり就任してできることなど限られている。
アフリカ予選無失点のチュニジアは堅守のチーム。言い方を変えると攻撃力がない。ネイションズカップでもそこがネックになっていた。
先制した時点で日本の勝利がほぼ確定

先制ゴールをあげた鎌田大地【写真:Getty Images】
ハーフウェイラインから自陣側に守備ブロックを構え、ブロック内へ侵入してきたところを迎撃、カウンターアタックに転じる堅守速攻型が看板だったが、ネイションズカップでは4試合すべてで失点している。
相手に引かれる展開になっていて、攻略できないままカウンターを食らってしまっていた。
堅守速攻型しか有力な戦い方がない。わずか4分で鎌田大地に先制された後も、チュニジアは戦い方を変えていなかった。失点が早かったこともあるが、他にやりようがないのだ。
チュニジアのブロック守備にはそこからハイプレスに移行する機能もない。ネイションズカップでも、プレミアリーグでプレーするハンニバルが中盤から前に出ても、周囲が全く連動していなかった。
できないものはやりようがなく、先制されても唯一の戦い方であるブロック守備を継続するだけ。ただただ日本にボールを保持されて時間が過ぎていった。
日本が先制した時点で、ほぼ勝利が確定したといっていい相手だったわけだ。
日本代表への過大評価に懸念?

伊東純也のゴールを祝福する日本代表【写真:Getty Images】
前回大会の2戦目でコスタリカに敗れたこともあり、試合前の監督、選手のコメントには警戒感が表れていた。国内メディアもそれをなぞるように、決して油断ならない相手という報道の仕方が多かったように思う。
もしかしたらチュニジアと日本の差がどれほどあるのか把握できていないのか、と感じてしまったのが正直なところだ。
日本代表が気を引き締めるのは当然のことだ。しかし、メディアがそれに同調する必要はないわけで、実際のところ日本とチュニジアにはそれなりの実力差があった。
事前報道の見せ方として、接戦にでもなりそうな雰囲気を作っていたのかもしれないが、誤解を生みかねないほどの過大評価は必要ないのではないだろうか。4-0で完勝したことで、逆に日本への過大評価につながるのではないかと、ちょっと心配になってしまった。
ともあれ、失点したにもかかわらず、チュニジアは攻めてこないし高い場所でボールを奪おうという動きも見せなかった。前記のとおり、戦い方が1つしかないからだ。
日本は慎重に様子をうかがいながらボールを動かし、チュニジアのスタミナを奪っていく。チュニジアの攻撃で唯一警戒すべきだったのはセットプレーだ。長身選手が多く、セットプレーでは大柄なDFがゴール前に出てくる。
しかし攻め込み自体が限られていて、FKも高さを活かすことができず。日本が不用意にボールを失う気配もなく、全く危なげのない勝利となった。